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2020-09-12

ハーバード流交渉術 ●イエスと言わせる方法 その5

こんにちは。齋藤です。

 

今回も「交渉」がテーマです。

 

「ハーバード流交渉術」(フィッシャー&ユーリー 金山宣夫 浅井和子訳 三笠書房 1990年1月刊)をもとに、優れた交渉のありかたを考えるこのブログですが、その3~その5にかけては、「解決の扉を開く交渉戦術」(第Ⅱ章)のパートの多岐にわたる記述の中で、私が実際に「使える」と感じた「戦術」(というか金言)を見ていきます。

 

 

 

まず、「ハーバード流」の基本的な視点のおさらいです。

① 人:人と問題とを分離せよ

② 利害:立場ではなく利害に焦点を合わせよ

③ 選択肢:行動について決定する前に多くの可能性を考え出せ

④ 基準:結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ

 

今回も、上記の4つの視点を敷衍して、具体的な場面でどのようにふるまうべきかについての金言を見ていきます。

前回までに、1~4をご紹介しましたので、今回は、5・6です。金言シリーズは今回で最後になります。

 

 

5「あなたの相手は目の前の彼だ」を忘れるな

「あなたが動かそうとする相手は、一人の交渉者か、そこにはいないボスか、あるいは委員会のような集団意志決定機関なのか。」

「『ヒューストン市』とか『カリフォルニア大学』といった抽象的相手とでは交渉は成り立ちにくい。

保険金の支払いをめぐって「保険会社」を説得するよりも、保険支払担当者に支払勧告書を書かせるように働きかけるほうが賢明である。」

いかに相手方の政策決定過程が複雑に見えても、その中の一人 ― 普通は実際に交渉にあたっている相手 ― に焦点を絞り、その一人の観点から問題を捉えてみれば、その決定過程を理解することができる。

 

この部分は、弁護士なら、大いに首肯しうる記述と言えます。

交通事故における相手方保険会社との交渉では、担当者にいかに上司を説得できる論拠を与えられるかに腐心しつつ、書面を作成します。

相手方担当者からは、よく、この内容では上司の決裁が下りない、というような話をされます。

しかし、上司が決裁しないのは、担当者が決裁すべきという稟議を書いていないことによるのが通常のはずです。

そうすると、陥落させるべきは、決裁権者である上司ではなく、現場の担当者になるはずです。

 

また、裁判においても、この裁判官が判決文を書くにあたり自分の書面のこの部分を引用したらまっとうな判決文になるはず、というような目線で書面を作成しています。

 

このように、誰を説得する必要があるのか、を念頭に置くことは交渉において極めて重要となります。

 

なお、このパートで、非常に重要と思われる記述が以下の部分です。

「言葉上の駆け引きと実質的な交渉を混同している人も多い。しかし、その区別は重要である。

もし実質的な成果を求めているのであれば、いたずらに『交渉の余地』をもうけないほうがよい。

「自動販売機でジュースを1本35セントで売るつもりなのに、交渉の余地を残すために、50セントという価格を表示する人はいないだろう。」

 

耳の痛い指摘です。

例えば、相手方に支払をしなければならない場合の金額交渉において、多くの弁護士が、依頼者から300万円という数字まで裁量をもらっておいて、とりあえず、250万円、あるいは220万円を提示してみる、というような手法をとっているのではないでしょうか。

こうした手法は、まさに、言葉上の駆け引きと実質的な交渉との混同と断じられることになります。

300万円で妥結できるのであれば、最初からその金額を提示すればよいわけで、250万円などと言葉上の駆け引きを仕掛ける必要はないはずです。

そこには、結局、客観的な基準というものから離れて、とにかく安くあげたい、という欲求に従っているに過ぎません。

このような態度では、立場駆け引き型交渉にならざるを得ないといえます。

最初から280万円や290万円を提示することで、こうした言葉上の駆け引きに時間を費やすことを避けられるのかもしれません。

 

 

6「脅すよりも信用を得る努力をせよ」

「我々はしばしば、当方の望むようにしないとこういうことになる、と警告して影響力を行使しようとする。

しかし、こうした脅しよりは、建設的な提案のほうが通常は効果的である。

当方の望むようにすれば、どんな好ましい結果を期待できるかということを気付かせると同時に、当方も、相手の立場から見た結果をもっとよくするように努めることである。」

 

「脅し」というべきなのかはわかりませんが、弁護士は、交渉が決裂しそうになると、裁判になってもいいのか、と言って相手に譲歩を迫ろうとします。

裁判所でも同様に、裁判官は、和解の勧めが功を奏さず、決裂しそうになると、判決になったら被告は250万円支払うことになるかもしれませんよ、などと言って、当事者に譲歩を迫ろうとします。

確かに、この「脅し」は相手にこちらの要求に従って面倒ごとを回避させるモチベーションを与える意味で一定程度有効なのですが、そこで得られる譲歩は通常わずかなものです。

ここで、肝に銘じなければならないのは、「脅し」一辺倒ではなく、相手も受け入れやすくなるような選択肢を提供せよとの教えでしょう。

共通の利害を探し、相手がこちらの要求を受け入れやすくなる下地を作る努力を忘れてはならないわけです。

 

 

この一連の金言シリーズは、今回の5と6とで終了です。

 

次回以降、ようやく、実際の交渉の際に相手方がこう出てきたらどう切り返すか、というようなパートに入っていきたいと思います。

 

次回以降が本書の最も面白い部分ですので、今後ともお付き合いのほどお願い申し上げます。

 

 

 

 

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