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2021-08-29

「マインドセット 『やればできる!』の研究」 まとめ

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今回は、「マインドセット」に関する本のご紹介です。

マインドセット(MINDSET)」・・・何やら聞いたことがあるようなないような単語ですが、要は思考様式や考え方のことを指しています。

この本は、スタンフォード大の心理学の教授が、「やればできる!」と確信して前に進むことができる「しなやかなマインドセット」を獲得するための方法について述べたものです。
ビル・ゲイツ氏が推薦したということで話題となりました。

どんな話かをかいつまんで説明しますと、

著者いわく、「自分についてのある単純な信念」は、「人生のありとあらゆる部分にまで浸透して」おり、

自分の性格(パーソナリティ)だと思っているものの多くが、実はこの心の在り方(マインドセット)の産物なのである。あなたがもし可能性を発揮できずにいるとしたら、その原因の多くは、「マインドセット」にあると言って良い。

にもかかわらず、マインドセットについて説明し、それを生活に役立てる方法をし示した書籍はこれまでなかった。

とのことです。

この本には、「あなたの人生を支配しているマインドセットの存在を認め、その働きをよく理解し、変えたい場合にそれを変えるにはどうすればよいかが記されてい」ます。

この本によれば、「しなやかなマインドセット」を獲得することで、ビジネスはもとより、人付き合いにも良い影響が及び、さらに子供たちに「やればできる!」という気を起こさせることのできる良い親・良い教師になれると言います。

このように書いていくと、考え方や習慣を変えれば人生が激変すると説く、よくある自己啓発本のように思われるかもしれません。

しかし、本書は人生をそこまで単純化してはくれません。
本書を読めば、「やればできる!」という信念を持ってコツコツ努力できるようになる、くらいのものです(しかも、そうなりたい人はなれる、くらいのもので、現状に満足しているから別にそうなりたいとは思わない人はそのままで結構、というスタンスです)。

なんだか物足りなく感じるやもしれませんが、しかし、本書に言わせれば、その、「コツコツ努力できる」という心のあり方こそ、成功が約束された「チャンピオンのマインドセット」というわけです。

前置きはこのくらいにして、さっそく詳しく見ていきたいと思います。

目次

マインドセットとは何か

本書によると、「マインドセット」とは、「心のあり方」のことを言います。

そして、個人の能力というものは生まれつき一定であるとする説、向上させることができるという説のいずれの説を信じるかによって、「硬直マインドセット(fixed mindset)」「しなやかマインドセット(growth mindset)」に分類することができます。

硬直マインドセット」の人は、「自分の能力は石板に刻まれたように固定的(fixed)で変わらないと信じて」おり、「自分の能力を繰り返し証明せずにはいられ」ません。

彼らは、「知能も、人間的資質も、徳性も一定で変化し得ないのだとしたら、とりあえず、人間としてまともであることを示したい」と考える、「ことあるごとに自分の知的能力や人間的資質を確認せずにはいられない人たち」であり、「しくじらずに上手くできるだろうか、賢そうに見えるだろうか、バカと思われやしないか、認めてもらえるだろうか、突っぱねられやしないか、勝ち組でいられるだろうか、負け犬になりはしないか、といつもびくびくしてい」ます。
「そして、成功すると、誇らしさが優越感にまで膨れ上が」ります。「なぜなら、成功することは、固定的な能力が人よりも優れている証拠だから」というわけです。

しなやかマインドセット」の人は、「人間の基本的資質は努力次第で伸ばす(growth)ことができるという信念」を持っており、「持って生まれた才能、適正、興味、気質は一人一人異なるが、努力と経験を重ねることで、誰でも皆大きく伸びていけるという信念」を持っています。

硬直マインドセットの人が、「初めに配られた手札だけでプレイしなくてはいけない」と思い、「本当は10のワンペアしかなくても、ロイヤルフラッシュがあるかのごとく自分にも他人にも思い込ませたくなる」のに対し、「しなやかマインドセット」の人は、10のワンペアをもとにして、「これからどんどん手札を強くしていけばよい」と考えます。

思いどおりにいかなくても、いや、うまくいかないときにこそ、粘り強い頑張りを見せるのが「しなやかマインドセット」の特徴」です。「人生の試練を乗り越える力を与えてくれるのは、このマインドセットなのである」というわけです。

硬直マインドセットとしなやかマインドセットの比較

硬直マインドセットとしなやかマインドセットをより細かく見ていきます。

↓↓↓本書の中では、両者の違いはこのようにまとめられています。

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硬直マインドセットは、能力(才能)は変化しないと考え、しなやかマインドセットは能力(才能)は磨けば伸びると考えます。まずはここが出発点です。

硬直マインドセットは、能力は変化しないとの考え方を前提とするので、とにかく自分は有能だと思われたくなります。誰しも無能だとは思われたくないものですので、ひたすら自身の有能さを誇示する振舞いに終始します。
その結果として、他人に対してマウントをとろうとしがちになります。

挑戦することには消極的です。
挑戦してうまくいかなければ、自身の無能が白日の下に晒されるからです。

壁にぶつかったらすぐに諦めます。
能力は変化しませんので、壁を乗り越えることなどできないと考えるからです。
挫折が大きな心の傷となりやすく、それを乗り越える手立てをみつけることも困難です。しかも、期末テストの点数や今月の営業成績といった短期的なしくじりにすら自身の尊厳を傷つけられてしまいます。

努力は忌まわしいものと捉えます。
そもそも、能力は変化しませんので、努力することに意味はありません。努力せずに成果を出してこそ、自身の優位性を証明できます。
そうして本気で努力することを怖がります。

批判に対しては耳をふさぎます。ネガティブな意見は無視しなければ、自身の有能さを守ることはできません。批判は自身のレゾンデートル(存在意義)を傷つける致命的なものと捉えるからです。

他人の成功を脅威に感じます。
自身より有能な者が現れることで、自身の地位が脅かされるからです。

結果的に、早い段階で成長が止まり、可能性を発揮できません。
すべてを決定論的な見方で捉えてしまい、他責思考に陥りがちです。

しなやかマインドセットは、能力(才能)は磨けば伸びると考えますので、学ぶこと、能力を伸ばすことそれ自体が喜びとなり、ひたすら学び続けたいと考えます。

挑戦することに積極的になります。
新しいことにチャレンジすることは、自身の能力を伸ばすきっかけになるからです。

壁にぶつかっても耐えることができます。
現在の自分では歯が立たないことでも、未来の自分は乗り越えられると信じられるからです。

努力は何かを得るために欠かせないものと考えます。

批判から真摯に学びます。
他者からの批判によって自身の尊厳を傷つけられはしません。自分自身の根源を批判されているとは考えず、自身の現在の能力不足を指摘されているに過ぎないと捉えることができるからです。

他人の成功からも学びや気づきを得ます。
〇〇さん成功に刺激を受け、○○さんのように自分も伸びていけばいい、そう思うだけです。

結果的により高い成果を達成でき、全てを自由な意思で切り開いていけます。

「成功」の捉え方

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「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」の違いは、「成功」と「失敗」に対する考え方にも影響を与えます。

硬直マインドセットの人にとって、成功とは、「試験に合格すること」、「営業成績トップをとること」、「会社の時価総額を増やすこと」、「試合に勝つこと」、であり、要するに、自身の能力を証明すること自身の優越を確立することがそれにあたります。

他方、しなやかマインドセットの人にとっての成功とは、「自分のベストを尽くし、学んで向上すること」です。

本書によると、タイガー・ウッズ選手はこう言ったそうです。

世界最高のゴルファーを目指すことよりも、「それ以上に大切なのは自己のベストを追求すること」

本書では、タイガーのこうしたセリフが、彼がしなやかマインドセットの持ち主であることを示すものだとしています。

去る東京オリンピックで、アメリカの体操女子代表のシモーン・バイルス選手(2016年リオ五輪や世界選手権で多数の金メダルをで獲得してきたアメリカ体操界のエース中のエース)が、「心の問題」を理由に複数の種目を欠場しました。

同選手は、最終的には種目別の平均台には出場し、銅メダルを獲得したのですが、そのインタビューの際に、この銅メダルがこれまでに獲得してきたどの金メダルより価値がある、というようなことを言っていました。

硬直的マインドセットの持ち主であろう私は、それを聞いて思わず、まぁそう言わざるをえないよな・・・と思ってしまったわけですが、修行不足というほかありません。
彼女が「チャンピオンのマインドセット」たる「しなやかマインドセット」の持ち主であれば、心の底から、メダルの色ではなく、そこに至るプロセス、すなわち、深刻なメンタルヘルスの問題を抱えながら、周囲に助けられつつ競技に参加し、その瞬間に自身に出来る最高の演技を披露することができた、という一連の過程に満足し、成功を掴んだと感じていた(そこにおいて、彼女にとって「成功」とは、金メダルをとること、ではなく、まさに「ベストを尽くす」ことそれ自体)はずです。

「失敗」の捉え方

硬直マインドセットの人にとって、失敗とは、単なる一つの出来事ではなく、「失敗者」・「負け犬」というアイデンティティにまでなってしまうといいます。

「毎年4月になると、大学からペラペラの封筒ー不合格通知―が届いて、全国津々浦々に無数の失敗者が発生する。優れた才能を持つ何千という若き学徒たちが、「プリンストン大学に入れなかった女の子」「スタンフォード大学に落ちた男の子」になってしまう

というわけです。

この点、しなやかマインドセットの人はそこまで深刻には受け止めません。

「しなやかマインドセットの人にとっても、失敗がつらい体験であることに変わりはない。けれども、それで「失敗者」になってしまうことはない。彼らにとっての失敗とは、それに立ち向かい、それと取り組み、そこから教訓を得るべきものなのだ」

というわけです。

「しなやかマインドセットの人は、失敗をバネにしてさらに前進しようとした。彼らにとって失敗は、教訓を与えてくれるもの、目を覚ましてくれるモーニング・コールなのである」

本書によると、しなやかマインドセットの権化であるマイケル・ジョーダンは、メジャーリーグへの挑戦が失敗に終わってブルズに復帰した際、プレーオフでの敗退が決まり次のように述べたといいます。

「いったん辞めてから復帰して、すぐに試合に勝てるなんて思っちゃいけない。心身ともにこれからしっかり鍛え直そうと思う」

史上最高の努力型アスリート」マイケル・ジョーダンの真摯な言葉です。

マインドセットにまつわる疑問

ここまで読まれて、いろいろなツッコミが浮かんできたかと思いますが、本書ではFAQが用意されています。

Q マインドセットは人となりの一部で、変えようがないのか

A 「マインドセットは性格の重要な一部分だが、自分の意思で変えることもできる。2通りのマインドセットの違いが分かれば、今までとは違った考え方や反応ができるようになる。」

Q 人はかならず硬直マインドセットとしなやかマインドセットに分類されるのか

A ほとんどの人が両方のマインドセットを併せ持っている。単純に2つに分けて説明しているのは、話を分かりやすくするために過ぎない。同じ人でも分野ごとにマインドセットが異なる場合もある。

例えば、著者は、芸術的才能に関しては硬直的に、知能についてはしなやかに捉えているふしがあるとのことです。

確かに、私も、このトシになって絵の才能が開花するとは思いませんし、これまで眠っていたバイオリンの才能が花開き、コンクールで優勝できるようになるとは思えません。

この意味では、芸術的「才能」というものは天賦のものと硬直的に捉えられがちです。

他方で、マンガ 「ブルーピリオド」を読んでいると、デッサンであれば本気で練習すれば多少はうまくなるような気になりますし、時間とお金をかけてしっかり指導してもらいさえすれば、このトシからでもバイオリンを弾きこなせるようになるかもしれない、とも思います。

何が言いたいかといいますと、能力というものについて、「個人の能力は生まれてこの方全く変化しない」とまで硬直的に考える人は少なく、「才能」の有無は別として、努力して練習すれば多少の改善は見られる、とある程度のしなやかさをもって理解している人が大半なのではないかということです。

また、誰しも、「しくじらずにうまくできるだろうか、賢そうに見えるだろうか、バカだと思われやしないか・・・」と思うことは必ずありますから、硬直マインドセットの要素を持っており、
他方で、「常に他者との関係で自分自身の優越性を確認しなければ気が済ままず、ひたすらマウントをとろうとしてくる」というレベルの鋼のような硬直マインドセットの持ち主もそうザラにはいない気がします(たまに見かけますが・・・)。

また、「マインドセットがこちこちの人でも、いつもそうとは限らない」と言います。
例えば、硬直マインドセットの人に「天賦の際には恵まれずとも素晴らしい能力を発揮した人たちの話を読ませたりすると、その人はマインドセットがしなやかになって、少なくともしばらくの間は、しなやかなマインドセットの人と同じ行動をとるようになる」らしいです。

同様に、しなやか→硬直になることもあり得るのかもしれません。

例えば、上記でしなやかマインドセットの人と紹介されていたタイガー・ウッズ選手ですが、不倫発覚・セックス依存症のくだりでは、どう考えてもしなやか成分少なめのように思われてなりません。逮捕された際のタイガーの目つきは全世界に衝撃を与えました。

マスターズの復活優勝で不屈のしなやかマインドセットぶりを証明したかと思ったら、速度超過での交通事故で選手生命の危機に瀕しています(タイガーほどの不出生の名選手が自身の不注意による交通事故で選手生命を絶たれるようなことになったら痛恨の極みです・・・いちゴルフ好きとして回復を心から祈っています・・・)。

あるいは、タイガーの場合、スポーツの分野ではしなやかマインドセットであるにもかかわらず、私生活においてはいまいちそのしなやかさを発揮できないということなのかもしれません。

というわけで、ほぼすべての人が、硬直マインドセット、しなやかマインドセットの両側面を有しており、あるときは硬直的なあるときはしなやかなマインドセットに基づいた振舞いを見せるのが人間というものなのでしょう。

どんなに単純な人間でも、複雑なものであるとはよく言ったものです。

Q 出世街道まっしぐらの仕事人間で、マインドセットがこちこちではないかと思われる人は大勢いる。自分はできる人間であることをひけらかしたがるが、仕事は熱心だし、チャレンジ精神も旺盛。硬直マインドセットの人は努力を嫌うという話と矛盾しないか。

A 硬直マインドセットの人はだいたいが、労せずして成功することを好むが、人の資質は変わらないと信じ、絶えず有能さを示そうとしながらも、精力的に仕事に取り組む人も大勢いる。ノーベル賞に人生をかけている人や、世界一の大富豪を目指している人はそうかもしれない。目標の達成に必要ならば努力をいとわないのだ。
この種の人たちは、懸命に努力することが能力に欠ける証拠だとは思っていない。けれども、それ以外の硬直マインドセットの特徴は全て持ち合わせている。絶えず才能をひけらかす。才能がある分だけ自分は人よりもエライと思っている。ミスや失敗、批判をひどく嫌う、などである。
ちなみに、しなやかマインドセットの人だってノーベル賞や巨富が嫌いなはずはない。けれども、そういうものを手に入れることで、自分の価値を確認したり、自分の優越を誇示したりしようとは考えない。

・・・真っ先にトランプ前大統領の顔が頭に浮かんだのは私だけでしょうか・・・ 弁護士業界にもこういう方は大勢おられます。
そうした人々は、このテの本を読むことはないでしょうし、よしんば読んだとしても、負け犬のたわごとだと切って捨て、自身を省みることはしないのでしょう。

Q 自分の硬直マインドセットに不満を感じていない場合はどうか。自分にはどのような能力や才能があり、それがどの程度のもので、何ができそうか、そうしたことが良くわかっていたとしても、マインドセットを改める必要があるのか。

A 満足しているのならば、どうぞそのままで。本書の目的は、2つのマインドセットとそれが生み出す世界を描き出し、どちらの世界に住みたいかを考えてもらうこと。重要なのは、マインドセットは自分の意思で選び取ることができるという点なのだ。
硬直マインドセットだと、自分のことがすっかりわかっているような気分になれるので、そのほうが気が楽かもしれない。どうせ才能がないのだから努力しても仕方ないとか、才能があるから必ずうまくいくとか、そんなふうに考えられるからだ。
けれども、硬直マインドセットの落とし穴に注意しよう。自分の才能を過小評価してせっかくのチャンスを逃したり、逆に、才能にあぐらをかいて成功の機会を逃したりということにもなりかねない。

自分自身のマインドセットを見つめる

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ここで、私自身のマインドセットを見直してみたいと思います。
次の教育とマインドセットのパートへのつなぎにすぎませんので、長くてウンザリしている方は読み飛ばして頂いても問題ありません。

高校生2~3年の大学受験時代、私は、完全な「こちこちのマインドセット」の人間だったと思います。
某国立大学に合格できなければ自分の人生はどうにかなってしまうと半ば本気で思っていましたし、某国立大学に合格するためにセンター試験で何点とるかが思考の大半を占めていました。ですので、この頃の学生生活の思い出、というものはほとんどありません(修学旅行の思い出くらいでしょうか)。こうして書いてみますとなかなか寂しい話です。

前期試験で某国立大学に落ちたときは、文字通り目の前が真っ暗になりましたし、この本に出てくる受験に失敗した高校生のように、自分には何の価値もないのだと敗北感に打ちのめされました。

問題は、親や教師にそのようなマインドセットを植え付けられたわけではなく、私が、自ら、「某国立大学に落ちる自分には価値がない」と自分自身を無意味に追い込んでいたことです。

本書においては、

「間違った目的のために頑張りすぎる子もやはり問題を抱えている。よく見かけるのが、毎晩深夜まで勉強している子や、クラスメートに差をつけたくて家庭教師についている子。このような子たちは、一生懸命に勉強してはいるが、マインドセットがしなやかでない子の典型と言える。学ぶことが好きなのではなく、自分の能力を親に証明しようとしている場合が多い。」

とされています。
かなり刺さります・・・
私の場合、親に証明したいというより、それこそ自分自身に自分の価値を信じ込ませたかった、というような感覚でした。

確かに、数学や化学、物理学の勉強には全く楽しさを見いだせず、「学ぶ楽しさ」からは程遠く、ただ、センター試験で必要だから、という悲しい理由だけで必死に詰め込んでいたわけで、かなりのストレスでした。

進学校の名のもとに、こうした「学ぶ楽しさ」からは程遠いストレスフルな、効率よく点数を取るためのスキルを詰め込むだけの「授業」が行われ続けているのだと思うとぞっとしますし、こうした「教育」を続ける限り、日本と世界の学力水準は開く一方となり、日本の最高学府・東大にできることはもはやクイズ王を輩出することだけになってしまうでしょう。

教育システムへの批判はさておいて、結果として、硬直的なマインドセットでは、少なくとも私の場合はパフォーマンスを引き出すことはできませんでした。むしろ、自分で勝手に作り出したプレッシャーに押しつぶされて自滅したと言えます。

そして、後期試験で何とか岡山大学に拾ってもらい、大学生活をスタートさせましたが、学業にはさっぱり身が入りませんでした。
どうせ自分なんて本気で勉強しても大したことなかった・・・などと斜に構え、早い話がふてくされていたわけです。

こうして我が身を振り返りますと、泣けてくるほど典型的な硬直的マインドセットの人間です。

他方で、大学を卒業し、ロースクールに進学してからは、クラスでの自分の順位のようなものは不思議とあまり気にならなくなりました。
法律学の勉強は真面目に取り組んでみるとそれなりに楽しいものでしたし、さすがにロースクールでは、高校時代のように、学生同士の競争をあおって受験勉強にまい進させるような空気はなく、シンプルに、法律家になるための基礎体力をつけるべく勉強する、という空気だったこともあるのかもしれません。

大学受験時代は、とことん自分を精神的に追い込んでガリ勉しまくった末に敗北した私でしたが、司法試験受験時代は、そうした大学受験時代の失敗を踏まえ、あまり精神的な負荷はかけず、淡々と日々を過ごすことを心がけました。

そうすると、大学受験時代のような悲壮感はなく、時には息抜きをしたりというようなこともでき、サイコパスをクリアに保ったまま本番の日を迎えることができました。

司法試験の全科目が終了したとき、これで受からなければもういいや、別の道を探そう、と心の底から思ったことを覚えています。
このように、とんでもなくこちこちのマインドセットだった大学受験時代に比べ、司法試験受験時代には、ほんのわずかながらマインドセットをしなやかにして受験に取り組むことができたように思われます。

そして、弁護士になって8年目の今、マインドセットはさらにもう少々しなやかになっているものと思いたいところです。
結婚し、子供が産まれ、サラリーマン弁護士を辞めるなど、様々な変化がありましたが、そうした変化を楽しめている自分がいるような気がしています。

しかし、まだ到底十分ではありません。
成長することこそが成功」という「チャンピオンのマインドセット」の域にはどう考えても達していません。

変化への不安はつきまといますし、優秀な人間だと見られたいという欲望は捨てられず、時に自分を実際より大きく見せたくもなります。
また、友人の弁護士が年収3000万円だと聞くと、刺激をもらうというよりは、硬直マインドセットの証左である嫉妬や他人の成功を脅威に感じる気持ちが胸の奥に湧き上がることがないと言えばウソになります。

さらにここでコロナにでもなれば、ここぞとばかりに世を恨み、感染を他人のせいにし、こちこちのマインドセットぶりをいかんなく発揮してしまうやもしれません。

教育ーマインドセットを培う

それでは、どうすれば、しなやかなマインドセットを身に付けることができるのでしょうか。
また、子どものマインドセットをしなやかにするにはどうすればよいのでしょう。

硬直マインドセットの生きづらさは、私が高校時代に嫌というほど経験しました。絶えず誰かと自分の成績を比べ、自分の価値を証明したい欲求にかられ、定期テスト、大学受験で大人たちに能力を試されます。そんな世界観はまっぴらです。
また、そんな価値観を子供に植え付けたくはありません。

本書では、「知っておきたい成功・失敗のメッセージ」として、子どもをしなやかなマインドセットに導く方法について述べられています。

個人的には、この部分が本書のエッセンスだと思っています。

「成功したときにどんな言葉をかけるか」

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「そんなに早く覚えられたななんて、あなたはほんとに頭がいいのね」

子どもを褒めるとき、このように言ってはいないでしょうか。

「たいていの親は、こうした言葉を、子どもの自尊心を高める励ましのメッセージだと思」って使っています。
御多分に漏れず、私もこのような言い方をしておりました。
「そんなに早くできるなんてすごいじゃないか」と。

「子どもをほめる親たちは皆、子どもをどんどんほめれば、自身がついて成績も上がると考えていた。頭がいい、才能がある、アスリートの素質十分、等々。」

しかし、本書は、こうした言葉遣いを戒めます。

「頭の良し悪しや才能の有無にこだわるのは、硬直マインドセットの子ではないだろうか」「親がいつもそういうことを口にしていると、子どもはますますそれに取りつかれてしまうのではないだろうか。」

励ますつもりで「頭がいいね」とほめることには、別のメッセージが潜んでいるといいます。
すなわち、
早く覚えられるのは頭がいいから→早く覚えられなければ頭が良くない」「うまくできるのは才能があるから→うまくできないならば才能がない」 というメッセージです。
私たちは、子どもを励ますつもりで、良かれと思ってこうした誤ったメッセージを送り続けてしまっていたのかもしれません。

そして、著者の研究では、「頭の良さをほめると、学習意欲が損なわれ、ひいては成績も低下した」と言います。
上記のようなほめ方によって、別のメッセージが子どもに刷り込まれ、「素早く完璧にできれば賢いと思われるのなら、難しいことには手を出すまい」というような硬直マインドセットになってしまうからです。

ほめたらほめたでダメなんかい、という感じですが、何も考えずにほめるだけではダメということでしょう。では、どうすればいいのでしょうか。

努力と成長に注目したメッセージを送ろう。

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本書では、「ほめるときは、子ども自身の特性(例:絵が上手い、計算が早い等)をではなく、努力して成し遂げたことを褒めるべきだ」と言います。

具体的には、

「今日はずいぶん長い時間、一生懸命に宿題をやってたな。集中して終わらせることができてえらいぞ。」

「心を込めて引いてくれて、本当に嬉しいわ。ピアノを弾いているときって時ってどんな気分?」

などのほめ方です。

うちの娘(5歳)が家でせっせとお絵描きをしていたので、以前であれば、「上手いじゃないか」と言っていたところを、試しに、「集中して頑張って書いてるな、どういうイメージでこの色を選んだんだい?」と言ってみました(実際は関西弁ですが)。

娘の答えは、手元にある色で書いただけ、とそっけないものでしたが、なるほど「しなやかマインドセット的な子どもへの問いかけ方」を考えるのにもなかなか頭を使います。
続けていけば、子どものマインドセットがどうなるかはともかく、私自身は「しなやかマインドセット的話し方」が身に付くような気はします。

失敗したときにどんな言葉をかけるか

試験の前の晩に、動揺しきっている娘の姿を見て、両親が何とか自信をつけさせるべくこのように述べます。

「ほら、あなたは頭がいいってこと、自分でもよくわかっているでしょ。私たちだってわかってるわ。絶対に大丈夫だから、もう心配するのはやめなさい」

しかし、頭がいいとか、才能があるとか言われても、試験にうまくいかないと、頭が良くないこと、才能がないことが裏付けられしまうことになり、これでは、試験に失敗したらどうしようと不安は増すばかりです。

本書で述べられている励まし方はこういうものです。

「自分がみんなから評価されているのに、自分の力をうまく出せないって思うと辛いわよね。でも決して、あなたを評価しようとしているわけじゃないのよ。私たちは、あなたが学んで伸びていってくれることを願っているの。あなたがしっかり勉強していることはよくわかっているわ。コツコツと努力を続けているあなたを誇りに思っているのよ」

いかがでしょう。
うまくいかない苦しさに共感しつつ、努力している姿勢を褒め、励ますというやり方です。
とっさになかなかこうは言えないだろうとは思いますが、示唆に富んだ提案です。

さらに、本書ではこういう話が出てきます。

9歳のエリザベスは、初めての体操競技会に向かうところだった。
すらりとして、しなやかで、エネルギッシュな体は体操選手にぴったりだったし、本人も体操が大好きだった。もちろん、競技に出場することにちょっと不安はあったが、体操は得意なので、きっとうまくできると思っていた。入賞してリボンをもらったら部屋のどこに飾ろうかしら、なんてことまで考えていた。

ところが、結局エリザベスは入賞を逃します。1日を終えてリボンを一つももらえなかったエリザベスはすっかり落ち込んでしまいます。

あなたがエリザベスの父(母)親だったらどうするだろうか。

①おまえがいちばんうまいと思う、と言う。
②おまえがリボンをもらうべきなのに判定がおかしい、と言う。
③体操で勝とうが負けようがたいしたことではない、と慰める。
④おまえには才能があるのだから次はきっと入賞できる、と言う。
⑤おまえには入賞できるだけの力がなかったのだ、と言う。

以上の「5つの反応を、マインドセットの観点からとらえて、そこに潜むメッセージ」を考えます。

①は、そもそも本心を偽っている。1位でないことは、あなた自身よくわかっているし、子どもだって知っている。こんな言葉をかけても、挫折から立ち直ることもできなければ、上達することもできない。

②は、問題を他人のせいにしてしまっている。入賞できなかったのは本人の演技に問題があったからで、審判のせいではない。我が子が、自分の落ち度を他人になすりつける人間になってもいいのだろうか。

③は、少しやってみてうまくできないものは、バカにしてかかることを教えている。子どもに伝えたいメッセージはそんなメッセージだろうか。

③のように価値の低いものと理解して、失敗したときのダメージを軽減させようとするのは、多くの人がやってしまいがちな手法ではないでしょうか。
私の父も、私が大学受験時代に夜遅くまで勉強していると、「そこまで根を詰める必要はない、某国立大学だけが大学じゃないし、落ちたって死にやしないんだから、楽に行け、楽に」とよく言ったものです。
後から考えますと、実際その通りな側面はあるのですが、当事者はそうは思えないものです。

壁を越えられなかったからといって、「こんな壁を超えることにたいした意味はない」とうそぶいても、永久に壁を超えることはできません。

④(お前には才能がある)は、この5つの中でもっとも危険なメッセージかも知れない。才能がありさえすれば、おのずと望むものに手が届くのだろうか。今回の競技会で入賞できなかったエリザベスが、どうして次の試合で勝てるのだろうか。

⑤(入賞できるだけの力がなかった)は、この状況で言うにはあまりに冷酷な言葉のように思われる。

実際はこう言ったのだ。
「エリザベス、気持ちはわかるよ。入賞目指して思いっきり演技したのにダメだったんだから、そりゃ悔しいよな。でも、お前にはまだ、それだけの力がなかったんだ。あそこには、おまえよりも長く体操をやってる子や、もっと懸命に頑張ってきた子が大勢いたんだ。本気で勝ちたいと思うなら、それに向かって本気で努力しなくちゃな」

「エリザベスの父親は、娘に本当のことを告げただけでなく、失敗から何を学ぶべきか、将来成功を勝ち取るには何をしなくてはならないか、ということも教えたのである。」

「気落ちしている娘を深く思いやりながらも、まやかしの誉め言葉で慰めたりはしなかった。そんなことをしても将来の失望を招くだけだからである。

私が子どもと話していて思うのは、子どもとのとっさの受け答えの中では、 自分自身の偽らざる本音がさらけ出され、口先だけで建前を繕うことは難しいということです。
自分自身、常日頃からしなやかなマインドセットを持っていなければ、子どものマインドセットだけがいつの間にかしなやかになっているなどということはあり得ないのでしょう。

硬直マインドセットの子どもたちは、親からひっきりなしに、自分の優劣を評価するメッセージを受け取っており、四六時中、品定めされているような気がしている」そうです。
そのような父親にはなりたくないもので、発言には常に気を付けなければなりません。

おわりに

最期に、本書で私が最も刺さったこの話を紹介したいと思います。

14歳の少年、フィリップは、父親と一緒に大工仕事をやっていて、うっかり釘を床にばらまいてしまった。すまなそうに、父の顔を見ていった。

フィリップ:あーあ、ぼくってほんとにドジなんだ。
父    :釘をばらまいたからって、そんなことを言うもんじゃない。
フィリップ:じゃあ、なんて言うの?
父    :釘をばらまいちゃった。拾って集めよう。そう言えばいい。
フィリップ:それだけ?
父    :それだけ。
フィリップ:ありがと、父さん。

「それだけ」、なんですよね・・・ なんて深い・・・

誰しも経験があると思います。例えば、手を滑らせてペットボトルの水を床にぶちまけたとき、生卵を床に落としてしまったとき、思わず、フィリップのように言ってしまったり、あるいはもっと大げさにイラついたりしてしまいます。

しかし、水をこぼしてしまっただけ、卵を落としてしまっただけ、床を拭けばいいだけ、それだけなのです。
そこに自分の人間性やなんかをリンクさせて卑下したり、イライラしたりする必要はないはずです。

私の大学受験の話に引き直すと、某国立大学に落ちちゃった、浪人してもう一度頑張ろう、あるいは、別の大学には受かったからそこでしっかり勉強しよう、そう言えば良かったのであり、それだけだったのです。

しかし、「それだけ」のことを実践することがなんと難しいことか・・・

こういう考え方、マインドセットを持ち、そうしたマインドセットのもとで家族や職場の人たちと付き合うことができれば、かならず周囲に良い影響をもたらすことができるでしょう。

本書によると、アメリカの女子プロテニス選手、ビリー・ジーン・キング(キング夫人)は、「人生を振り返ったときに何と言いたいか、それですべてが決まる」と言ったそうです。

「使わずじまいの才能を大事そうに磨きながら「やればできたのに・・・とぼやくのがよいか。それとも、「自分が価値を置くことに全力を注ぎこんできた」と胸を張って言い得るのが良いか。よく考えてマインドセットを選び取ろう。」

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