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カテゴリー: お知らせ, 法律関係
2021-09-19

弁護士・法律事務所向けクラウド案件管理システム LEALA 実装レビュー

こんにちは。齋藤です。

今回は、法律事務所のDX化についてのお話です。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、リモートワークの必要性が叫ばれる中、紙ベースの膨大な資料・FAXでのやりとり・職印などなど、旧態依然とした業界慣行もあって、なかなかデジタル化には踏み切れない、というのが弁護士業界の現状かと思われます。

そうは言っても、クラウド化は世の趨勢のような気がしますし、DXの波に取り残されてしまっては業界自体の浮沈に関わりますので、弊所でも、ものは試しとクラウドでの業務管理システムを導入してみました。

本年(2021年)4月頃より利用を開始し、そろそろ半年が経とうとしておりますので、このあたりで使い勝手等をレビューさせて頂き、ご同業の皆様方と情報共有できればと存じます。

今回弊所が導入した業務管理システムは、「LEALA」(レアラ)と言います。

弁護士・法律事務所向けクラウド案件管理システム」を謳っており、謳い文句通り、法律事務所向け特化のクラウドサービスです↓↓↓

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システムを運営するのは「株式会社レアラ(LEALA Inc.)」で、同社サイトによりますと、IT企業出身の代表取締役・CEOの林氏と取締役で現役弁護士の大橋先生とで設立したITスタートアップのようです。

例えば大塚商会のような東証一部上場の大手企業が展開するサービスを使う選択肢もあるわけですが、滋賀という地方の、しかも弁護士2名の事務所である弊所としては、小さな規模感で頑張っているスタートアップを応援したいという思いもあり、「LEALA」の導入を決めた次第です。

以下では、使ってみての率直な感想を、重要と思われる順に書き出していきます。

良い点その1-法律事務所特化型であること

 このご時世ですので、クラウドの業務管理システム自体は様々なサービスが存在します。

 例えば、以前弊所で利用していたサイボウズなどは最も普及しているサービスのひとつと思われます。

 他方で、そうしたサービスは、いろいろな業種で利用されることを想定したユニバーサルデザインですので、法律事務所での業務にフィットさせるには工夫が必要であり、また、工夫といっても当然限度がありますので、小さな「もの足りなさ」の積み重ねにストレスを感じることもあるものと思われます(少なくとも弊所ではそうでした)。

 その結果、結局、事件記録や顧客情報は紙資料での把握がメインとなってしまい、情報を一元化できず、また、リモートワークをしようにも、全ての紙資料を自宅に持ち帰らなければならないなど、DX化とは程遠い状況でした。

 ともあれ、何といってもサイボウズは一人500円と安いので、このあたりは金額との見合いかとも思われますが。

 他方で、「LEALA」は法律事務所特化型として開発され、現役弁護士である大橋先生が監修しておられますので、従来のユニバーサルデザインの業務システムにはなかった痒い所に手が届く仕様となっています。

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↑↑↑案件管理の画面なのですが、従来、ひとつの事件につきひとつのファイルを作成していたように、ひとつの事件についてひとつの箱を作り、その中に、依頼者、相手方、着手金、実費、報酬金、係属裁判所、誰からの紹介か、などを入力していきます。

 また、裁判所に提出した書面のデータも同じ箱の中に入れることができます。

 さらに、従来手書きのメモに残していた裁判所での発言や、依頼者とのやりとり、事務職員への指示など、その全てを同じ箱に収めることができます。

 ですので、従来、紙媒体の事件ファイルを作ってやっていたことのすべてを、クラウド上に持ってくることができます。

 従来の法律事務所では、仮に主担当の弁護士がコロナで急に倒れた場合、同弁護士の汚い手書きのメモを見て、依頼者とどんな話になっていたのか、裁判所での事件の進捗状況はどうだったのか、などを読み解く必要がありました(しかも、管理がずさんでそうしたメモすら発見できないもあったかもしれません)。

 しかし、案件をクラウド上で一元的に管理していれば、そうした不意の事態への対応に多くのリソースを割く必要はなくなります。

良い点その2-会計ソフトとの連携

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 弊所では、会計ソフト「freee」を使って経理を行っているのですが、従来は、経費や着手金、報酬金、実費などをExcelで管理しつつ、売上については別途会計ソフトに入力していたため、二重に入力する手間がどうしても生じてしまい、確定申告前は、事務職員がその作業に忙殺される、ということが起こってしまっておりました。

 「LEALA」の導入により、「LEALA」に入力した会計データをCSVで吐き出して会計ソフトに連携させることが可能になったため、確定申告前の作業を大幅に軽減することが期待できます。

まさに、同社が言う、

本質的な業務に、時間を。

というヤツです。

良い点その3-セールスフォースを使える

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 SaaSは「Software as a Service」の略語で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」のことです。クラウドサービスとして提供されるソフトウェアのことを指します。

 「Salesforse」(セールスフォース)は、SaaSのクラウド顧客管理システムとして、世界トップシェアを誇っているシステムで、「LEALA」はこの「Salesforce」を基盤としています。

 ざっくりと言いますと、セールスフォース社が提供・販売(従量課金制)している顧客管理システムのサービスに、レアラ社が法律事務所の案件管理システムを上乗せして、我々ユーザーに提供・販売しているわけです。

ですので、案件管理のみならず、セールスフォースを使ってマーケティングのデータまで取ることができます。
営業のことなど考えなくてよいという事務所はもはや多くはなくなってきており、こうしたマーケティングのツールにご興味のある方は多いと思われます。
弊所などは、これまで、何となく、「ウチの事務所は紹介が多い」などと思っていたところ、ポータルサイトからの受任も軽視できない規模になっており、今後の事務所運営についていろいろ考えるきっかけをもらっています。

 さらに、セールスフォースのシステムを使うことで、セールスフォースのサーバー上にデータを保管することができます。

 セールスフォース社は、クラウドインフラ事業で世界有数のシェアを占めており、当然、そのセキュリティは堅牢です。

 法律事務所において、ITシステムの導入を検討する際に決まって問題視されるのがセキュリティへの不安です。
ただ、少なくとも、セールスフォースのサーバーに侵入されてデータが抜き取られた、といった事例はこれまでに発生しておらず(これは、amazon web service、Microsoft Azure、Google Cloud でも同様)、もちろん情報漏洩リスクをゼロにすることはできませんが、少なくとも、夜間に事務所の鍵を壊して侵入して鍵をかけたキャビネットにしまってある記録を盗むことよりは、こうしたサーバーに不正アクセスを仕掛けて情報を盗むほうが難しいのではないでしょうか。

 というわけで、データをクラウド上に置くことをそこまで不安視する必要はないかと私は思っております。

良い点その4-高いカスタマイズ性

「LEALA」の案件管理システムは、個別の法律事務所のやり方に沿って、かなり柔軟に変更可能なものに作られています。

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↑↑↑例えば、このホーム画面のダッシュボードにどのようなデータ・グラフを表示するかはユーザーが任意に変更できます。

また、↓↓↓案件管理の画面のレイアウト等もユーザーのオーダーにより、柔軟に設定を変更できる作りとなっています。

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↑↑↑ちなみに、デフォルトでは青が基調のデザインのところ、弊所では、ミカンにちなんで黄色を基調にして頂いております。

また、画面左上の「LEALA」のロゴも事務所ロゴにして頂いており、どうでもいいことなのですが、地味に嬉しくなります。

 従来は、システムの作り・仕様に事務所内のオペレーションを合わせる、という発想で考えざるを得ませんでしたが、「LEALA」では、事務所内のオペレーションに合わせてシステムをカスタマイズすることができるようになったわけです(もちろん、できることとできないことがありますが)。

 思えば我々の勝負服であるスーツも、数十年前までは完全オーダーメイドの高価なものであったのが、安価な既製服が登場したことで、身体に沿って服を作るのではなく、服に身体を合わせるようになりました。しかし、CADの導入やさらなるデジタル化により、人に合わせて服を作ることのコストが低くなり、オーダーメイドがより安く提供できるようになってきています。

 話は逸れましたが、言いたかったのは、これからの製品やサービスは画一的なものを広汎に提供するという姿勢ではダメで、顧客一人一人に応じたカスタマイズができる、あるいはなされているものでなければ指示を得られなくなりつつあるのではないかということです。
その意味で、「LEALA」のシステム設計は、そうしたトレンドを押さえており、今後、より多くのユーザーを獲得するのではないかと勝手に思ったりしています。

 

良い点その5-カスタマーサクセス!

「LEALA」では、カスタマーサクセスが重視され、システム導入まではもとより、導入後も、定期的に担当者とのWEBミーティングによるサポートが受けられます。

仕様の面で変更してほしい点をオーダーすることもでき、マイナーチェンジを繰り返してさらに事務所にフィットした形に変更してもらえます。

このように、「LEALA」のサービスでは、導入後でもひと手間ふた手間をかけてもらえることが、売り切りのサービスとは違う満足感につながっており、ある意味、この点が、案件管理システムという製品本体の出来以上に「LEALA」のサービスの良いところと感じる方もおられるかと思います。

「LEALA」のようなサブスクビジネスでは、契約してしまえばあとは手数を減らしたほうが、人件費を節約=短期的な利益を最大化できるわけですが、あえてそうした戦略を取らないことで、サービスの継続的利用につなげるのが、「カスタマーサクセス」の考え方です。

もともと、SaaSの普及と共に、「カスタマーサクセス」というワードも普及していったようですが、要は、サービスを継続的に利用してもらうために、サービスの利用がユーザーの成果につながるようしっかりサポートしよう、という話です。

「LEALA」のご担当者には本当に毎月いろいろやって頂いており、ユーザーからしても、こんなに人件費をかけて商いが回るのか、と心配になるほどです。

ユーザーからフィードバックを得られることは「LEALA」にとっても有益、という考えなのでしょうが、サポート力はご担当者の腕次第という部分もあるやに見受けられ、今後ユーザーが増えていった場合に、現在のようなカスタマーサクセスを提供し続けられるかがポイントになりそうです・・・(誰目線なのか・・・)

↑↑↑「LEALA」ご担当者とのミーティング風景です。だいたい月に一度の頻度でWEBミーティングをして頂いております(導入時はもっと頻回でした)。

 

困っている点-スマホアプリが重い!

 ここまで基本的にべた褒めばかりで薄気味悪く感じておられるかたもいらっしゃるかと存じます。

 製品にせよサービスにせよ、100点満点などというのはまれなもので、もう少しこうだったら・・・と思うのは世の常であり、そうした、ポジティブもネガティブも含めた使用感を書かなければレビューの意味はないとも言えます。
また、LEALAさんのいちユーザーに過ぎませんので御用記事を書く理由もございません。

 そのような観点から、ニュートラルな立場で書いているつもりなのですが、結果としてポジティブ評価ばかりになっているのは、単に、使ってみて、本当に大きな不満はなく、シンプルにいいサービスだと思っていることの表れであります。

 一方で、これだけは言いたい、というのもありまして・・・それが、「スマホアプリが重すぎる問題」です。

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↑↑↑salesforceのスマホアプリを「LEALA」用にカスタマイズしたものを使うわけなのですが、これが重い・・・

 どうやら、グーグルピクセルのような、ミドルレンジスマホであればそれほど遅くは感じないそうですが、低スペックのスマホでは太刀打ちできず、私の「AQUOS sense3」(スナドラ630)では、下手をすると、アプリが起動するまでたっぷり40秒ほどかかってしまう始末(最悪の場合ホワイトアウト)で、裁判期日で次回期日の日程調整をスムーズに行うためには事前に立ち上げておくなどの工夫が必要になります。

 基本的に、スマホで動画を見ることもなく、ゲームをすることもないので、スマホのスペックは最小構成で良いと考えていた私ですが、こんなところで名機「AQUOS sense3」にケチがつくとは・・・

ちなみに、中野弁護士の「iPhone8」でも速度は私のAQUOSとそれほど変わらずですので、ハイエンドスマホでなければサクサク動かすことは難しいのではと思ってしまいます。少なくとも、低スペック・旧スペックスマホでの動作にはかなりストレスを感じます。

中野弁護士が満を持して新たに投入する「iPhone13pro」で体感速度がどのくらい変わるのか、楽しみです。

おわりに

 さて、気になる導入費用、月額利用料ですが・・・同社サイトでも具体的な利用料金については触れられておらず、「詳しくは資料請求を」となっておりますので、ビジネスの邪魔になるような記載は慎むことといたします(そこがいちばん重要だよ、とお考えのご同輩には申し訳ございません)。
ただ、弊所が言うのもなんですが、個人的な感覚として、高くはない、と感じています。
そして、導入する事務所が増えれば、さらに安くなるという展開もあり得るのかもしれません・・・

しかし、個人的には、現状月額料金に不満はないため、導入する事務所が増えて利益が増えれば、料金は据え置いたままサービスのアップデートに費用を割いたほうが持続的な発展につながるとも思います(誰目線だよ・・・)。

 民事訴訟のIT化も遅ればせながら進行しており、リーガルテックも続々と新たなサービスが産声を上げる今日この頃ですが、世界から見ると日本のDX化は既に周回遅れとなって久しいと言われており、そのなかでも、我ら法曹業界は、デジタル化という点では極めて遅れた、前時代的な業界になり果ててしまっていると言わざるを得ない状況にあります。

 そんな中で、我々のような小さな事務所こそ、新たなツールをスピード感を持って導入し、業界の変化の先頭に立って大きなうねりを作り出していけるのではないかと密かに思っていたりする次第です。

 今後とも、サービス品質の向上にむけて取り組んでまいりますので、引き続き弊事務所を何卒よろしくお願い申し上げます。

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