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カテゴリー: 新着情報, 法律関係
2022-04-25

弁護士の業界地図-ビジネスモデルから見る弁護士事務所

弁護士の業界地図について書いたものがあまり見当たりませんので、書いてみました。
司法修習生が進路を考えるうえでご参考になれば。

なお、修習生から、マチ弁事務所に入るか、もう少し規模の大きいところに入るか迷っている、という話を聴くことがままありますので、近時勢力を拡大している多店舗展開の事務所とマチ弁の在り方により字数を割いています。

また、精緻な考察に基づくものではなく、あくまで雑駁な印象論を展開する、浅い記事に過ぎないものであること、ご容赦ください。
さらに、「ビジネス」という呼称に他意はないこともご理解を賜れましたら有難く存じます。

画像1

↑↑↑年収・労働時間・顧客単価のイメージを大げさにグラフ化してみました。
あくまで大げさに表現したに過ぎませんので、あしからず。

目次

●いわゆる四大+TMI(もはや5大)

業務のメインはもちろん企業法務。
それぞれ約500~600名の弁護士を擁し、国内外のデカい案件を一手に引き受ける。

この5事務所の次に人数が多いのがベリーベストの300名弱であることからすると、規模の点で圧倒的な差異化がなされている。

優秀な弁護士を数多く集めることで得られる規模のメリットや知識の集約により、中規模の事務所では処理困難な事案や法的にハイレベルな事案に対応することができ、結果、他のカテゴリーにはまねのできないリーガルサービスを提供するモデル。

●準大手事務所

50~150名程度の事務所をイメージ。
業務のメインは企業法務。

ビジネスモデルとしては、上記四大+TMIの考え方と変わりはないと思われる。

四大+TMIほどの人数はいないものの、マンパワーが必要な案件にも十分に対応できる。
同僚の顔が見える規模で、かつ、大きな仕事ができるということを希望し、四大ではなくあえて準大手事務所に入る若手もいると聞く。
四大事務所に負けず劣らずハードワーク。
給与水準は事務所によると思うが、四大事務所とそう変わらないのではないか。

●四大卒業系中規模事務所

最近のトレンド、新たな流れ。
四大事務所で活躍した若手や中堅どころが数人で集まって事務所を開設し、さらにそこに他事務所から優秀な人材が移籍してくる好循環。

四大事務所での経験を元に、ハイレベルな企業法務を提供するとともに、スピード感・機動性をプラスする。

給与水準は事務所によると思うが、マチ弁事務所の初任給よりはよい条件であると思われる(知り合いがいないので、実際のところはよくわかりませんが)。

●ブティック事務所

特定の分野に特化してリーガルサービスを提供する事務所。
当該分野に長けており、依頼者からすれば心強く、今後の顧客ニーズが見込まれる。

ジェネラリスト→スペシャリストという時代の流れにマッチしており、今後もこのモデルの事務所は増えていくことが予想される。
また、今後、若手弁護士の転職先としても人気になるのではないか。

給与水準は事務所によると思うが、マチ弁事務所の初任給よりはよい条件であると思われる(知り合いがいないので、実際のところはよくわかりませんが)。

●外資系事務所

外国の法律事務所の日本支店、または、提携関係となる事務所を指す。
四大事務所と顧客層は重なる部分はあるものの、グローバルなネットワークを有することから、クロスボーダー案件等で強みを発揮する。

四大事務所が帝国ホテルやホテル・オークラであるとするなら、こちらはマリオットやヒルトン。
世界規模のネットワークを築くことで、やはり国内では唯一無二のリーガルサービスを提供する。
若手の頃から給与水準が高めであり、四大事務所以上の条件のところもあると思われる。

●多店舗型新興事務所

アディーレ、ベリーベストが代表格
全国に支店を持ち、テレビCM、WEB広告等のメディア戦略を駆使して、一見客の集客を狙うモデル。
中間層の一見客がメインのため、顧客単価も高くはならず、任意整理・離婚(不貞慰謝料請求)・交通事故など、ある種定型的な事件類型に特化して、処理件数を高めることで収益力を高めるモデル。

現在では、このモデルの事務所でも、価格はそれなりに高く、むしろ、「その他マチ弁」よりも値付けが高い場合すらあるものとも思われるが、方針を転換し、大幅な値下げに踏み切ることができる土壌(AIのさらなる普及によるリーガルサービスのコストダウン、人件費の削減可能性等)が整ったとき、「その他マチ弁」はこのモデルの軍門に下ることになると予想する(この予想が外れればゴリゴリのマチ弁である当職はむしろホッとします、というか外れてほしい)。

多店舗型新興事務所は、以前こそ、そのビジネス性や業務内容の定型性、先進性から異端視されていたものの、「顧客サービス」(サービスの価格と品質の最適解)を追求するなら、「その他マチ弁」よりもこちらのモデルに分があるものと言わざるを得ず、かかるモデルの事務所のもとに下記の「その他マチ弁」が統合されていくであろうことは時代の趨勢ではないかと思われる。

20年前には商店街や駅前に個人商店の靴屋があったが、今では国道沿いの「靴流通センター」やショッピングモール内の「ABCマート」に淘汰されてしまったものである。
また、我々の勝負服であるスーツにしても、30~40年前までは、オーダーメイドの一点もので、20万円~30万円ほどすることは当たり前であり、中間層のサラリーマンも、そうしたスーツを着用していたわけであるが、やがて量販店で5万円以下の既製服に取って代わられるようになった。

一度下がった製品・サービスの価格は二度と元には戻らない。
また、サービスの品質は顧客には伝わりづらく、価格というものが中間層にとって最も訴求力のあるものである以上、よほど品質に開きがない限り、安価であることが選択されることになる。

製品とリーガルサービスとで全く同一に論じることはできないが、AIが普及し、事件一件一件の差異を前提とするオーダーメイド性がより薄れていくのではないかと思われ、結果、紳士服業界で起きたオーダーメイドから量販店の既製服へという流れと同様のことが、弁護士業界においても起こるのではないか。

そうすると、多店舗型新興事務所が、安価にサービスを提供し始めたとき、「その他マチ弁」は、同じ金額に下げるか、オーダーメイド性を追求(なので値段が高いことを納得してもらう)するかの選択を迫られる。
もちろん、価格競争になれば「その他マチ弁」の敗北は必至であるから、弊所も含め、「その他マチ弁」としては、サービスを高めて競争力を向上させなければ、多店舗型新興事務所の資金力(広告力・安価にサービスを提供できる力)に屈服せざるを得ない。
例えば、高級紳士靴専門店や、コアなワークブーツ専門店、20~30万円の高級紳士服店のような、ニッチさ、あるいはサービスの差異化で生き残ることが可能なのか・・・いずれにせよ、相当な数の「その他マチ弁」が淘汰されることになる。

このように、目下、「その他マチ弁」にとって最大のライバルと言える。

なお、多店舗型新興事務所は、そのホワイトな就労環境から、ワークライフバランスを重視する若手の就職先として人気を得ている。

●一見さんお断り系老舗事務所

「一見さんお断り系老舗」に込めた意味としては、あたかも祇園の料亭や銀座の会員制バーのような、伝統と格式に裏打ちされた佇まいをイメージしてほしいということ。

顧客は紹介筋のみであり、WEBサイトを持っていないことも多い。

30年前はどの弁護士もこうだった・・・という古き良き事務所。
それが現在にまで生き残ることでむしろ希少な存在となっているモデル。

太い顧客の存在により、「営業」という観点からおよそ隔絶され得、顧客単価も高い傾向にあると思われる。
業務内容にほとんど変わりはないものの、「その他マチ弁」とは区別されるべき存在であり、密かに「その他マチ弁」からの羨望の眼差しを集めている・・・かもしれない。

●その他マチ弁

大変失礼な表現をお許し頂けるなら、玉石混淆。
腕の立つ弁護士から、そうでない人まで。
稼ぎまくっている人から、そうでない人まで。

ある分野のスペシャリストの先生もいるが、通常は、離婚にも破産にも刑事にも中小企業法務にも対応することが求められ、ジェネラリストに徹する必要がある。

弁護士が増加の一途を辿っている昨今、このカテゴリーでは、「営業」「マーケティング」から逃れることはできない。
「多店舗型新興事務所」の説明に書いたような業界構造の変化を前提とすると、「なぜその事務所・弁護士に頼むのか」が問われ続けることとなる。
どのように集客するか、客単価はどうか等、法律の知識以外のことを考える時間は多い。
悲しいかな、「お金」の問題について全く考えたくない、という人はおよそ向いていないかもしれない。

●インハウス

企業の法務部で働く有資格者だが、自治体職員として働く弁護士も同じカテゴリーだと思われる。
求められる知識は企業によってさまざまで、必ずしも知財関係の知識が必要とされるとは限らない。
また、インハウスの増加によって、英語すら必須でなくなっていると聞く。

ワークライフバランスを重視する若手の就職先として人気を得ているが、バリバリ働きバリバリ成果を出すことを求める企業も多く、このあたりも企業によってさまざま。

●おわりに

重要な点は、上記はあえて無理やりカテゴライズしたに過ぎないもので、これに反する事務所、弁護士は山ほどいるということです。
弁護士の良さは、こうした勝手なカテゴリー分けなど全く関係なく、自分の好きなように、思う通りに仕事ができることだと思っています。

あくまで、無理やりカテゴライズしたうえで、そのカテゴリーの大多数の特徴を挙げることにより、現在の弁護士業界の全体像を理解するための参考になれば程度のものであること、くれぐれもご留意願えましたら幸いです。

弁護士の業界地図について書いたものがあまり見当たりませんので、書いてみました。
司法修習生が進路を考えるうえでご参考になれば。

なお、精緻な考察に基づくものではなく、あくまで雑駁な印象論を展開しているに過ぎないものであること、ご容赦ください。

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