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カテゴリー: 法律関係
2021-02-14

競馬に関する法律の話②(ギャロップレーサー事件 競走馬のパブリシティ権)

こんにちは。齋藤です。

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今回は、競馬に関する法律の話②として、いわゆるギャロップレーサー事件(ダービースタリオン事件)について書いていきたいと思います。

もくじ

 

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弁護士ドットコムに取材を受けた際の記事です。↓↓↓  以下の内容を簡潔にわかりやすくまとめてくださっています。

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●パブリシティ権とは

この「ギャロップレーサー事件」は、いわゆるパブリシティ権の有無が争点になった著名な判例(最高裁判決)です。

パブリシティ権とは、著名人が自己の氏名・肖像などにより生じる顧客吸引力を持つ経済的利益ないし価値に対して有する排他的権利のことです。

簡単な話で言うと、このパブリシティ権があるから、例えばゲームソフトで有名人の名前を使用する場合、ライセンス料を払わなければならない、というわけです。

例えば「実況パワフルプロ野球」や「ウイニングイレブン」において、選手の実名を使うことは、実名を使わない場合に比べてゲームソフトの販売本数が増加するはず、との理解を前提に、ゲーム会社が実名の使用許諾料を支払っていない場合、選手の顧客吸引力にただ乗りしてゲームソフトの販売本数を増やしていることになるのであるから、その利益の一部は選手(あるいは球団等)に還元されるべきである、ということです。

このような考えを前提に、コナミ等ゲーム会社が選手の実名を使用する場合、例えばプロ野球であれば、日本野球機構(NPB)とコナミとの間でライセンス契約が締結されるのが通常です。

有名人の場合、上記のように、ライセンス料を払わなければならないという話になるわけですが、競走馬の場合も同じように考えて、ゲームソフトに実際の馬を登場させる場合に馬主に対してライセンス料を支払わなければならないのか、有名「人」と馬という「モノ」の場合とで考え方が異なるのか、これが「物のパブリシティ権」という問題です。

馬主が、競走馬をゲームソフトに無断で使用したゲーム会社を訴えたのが、ギャロップレーサー事件・ダービースタリオン事件で、このうち、ギャロップレーサー事件上告審判決は、競走馬についてこのパブリシティ権が認められるか(物のパブリシティ権)について最高裁判所が判断を下したものとして非常に重要です。

●「ギャロップレーサー」というゲーム

まずは、「ギャロップレーサー」というゲームについてです。

私は中高生のときに1と2あたりを友人に借りてプレイしたことがあるのですが、どうやら2005年にプレイステーション2で発売された「ギャロップレーサー8 ライヴホースレーシング」以降、ナンバリングタイトルはないようで、なじみがない方も多いかもしれませんのでどんなゲームかという説明から入ります。

「ギャロップレーサー」(Gallop Racer)は、テクモ(現・コーエーテクモゲームス)が製作・販売した競馬ゲームおよびシリーズの名称。業界初の3Dジョッキーレースゲームである。略称は英単語の頭文字をとってGR。

プレイヤーは騎手となり競走馬(『8』では5000頭以上)に騎乗し勝ち抜いていき、用意されたさまざまなイベントをこなしていくのが基本である。条件を満たすと外国の馬や過去の名馬に騎乗できるようになったり、外国のレースに騎乗できるようになる。

(Wikipediaより引用)

プレイヤーは騎手になって、実際の競走馬にまたがり実際に存在するレースを戦います。

記憶では、馬込みに入ったら絶対に抜け出せないようになっている(もまれるとスタミナを消費してしまって脚色が顕著に鈍る)ので、よほどこだわりがない限り脚質は差しか追い込みを選択し、残り3ハロンまで中段より後方で待機し、大外を回って上り2ハロンをひたすらムチ連打で追いまくる、というやり方が有効だった気がします(おぼろげな記憶ですので間違っていたら申し訳ありません)。

●「ギャロップレーサー事件」の概要

原告は、競走馬の馬主さんたち、被告は現在のコーエーテクモゲームスの合併前のテクモです。

問題となったゲームは、「ギャロップレーサー」および「ギャロップレーサー2」です。

テクモは、「ギャロップレーサー」および「ギャロップレーサー2」を製作・販売するに際し、馬主らに競走馬の名称について使用許諾を得てはいませんでした。

そこで、馬主らが,競走馬の名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)を有することを理由として,テクモに対し,馬主らの承諾を得ないで「ギャロップレーサー」および「ギャロップレーサー2」に競走馬の名称等を使用したことによりパブリシティ権を侵害したと主張して,「ギャロップレーサー」および「ギャロップレーサー2」の製作,販売,貸渡し等の差止め及び不法行為による損害賠償を請求したのが、「ギャロップレーサー事件」です。

第一審の名古屋地裁、控訴審の名古屋高裁は,競走馬の名称等には,著名人の名称等が有するのと同様の顧客吸引力を有するものがあり,そのような場合には,その名称自体等に経済的価値がある、とし、競走馬の所有者は,競走馬の名称等が有する経済的価値(無体的価値)を独占的に支配する無体財産権(物のパブリシティ権)を有するものと解すべきであって,これを保護しなければならないとして、競走馬について物のパブリシティ権を認め、これを侵害した場合には,不法行為が成立し,損害賠償請求権が発生するとして損害賠償を認めました(なお、控訴審は、そのような物のパブリシティ権を、競走馬のうち,中央競馬のG1で勝った馬のみに限定しています。また、ゲームソフトの制作、販売、貸渡し等の差止め第一審・控訴審ともに否定しています)。

●「ダービースタリオン事件」もある

同様に、物のパブリシティ権が問題になった裁判例として、ダービースタリオン事件があります。

ギャロップレーサー事件の原告の馬主らは、ゲームソフト「ダービースタリオン」における競走馬の名称の使用についても、アスキーを被告として、パブリシティ権に基く損害賠償を請求していました。

ここでも競走馬についてパブリシティ権が認められるかが争点となり、東京地裁、東京高裁でこのことが争われたのが「ダービースタリオン事件」です。

知る人ぞ知るゲームである(と言ったら怒られるかもしれませんが)ギャロップレーサーに対して、このダービースタリオンは現在も続編が発売されているタイトルですので、ダービースタリオンのほうが圧倒的に知名度が高いものと思われます。

私はダービースタリオンはほとんどやったことがないため、ダービースタリオンについての説明はダービースタリオン事件第一審の東京地裁平成13年8月27日判決の説明を引用します。

ダービースタリオンは、「一定の資金等を与えられたプレーヤーが、費用を支出しつつ競走馬の交配、生産、調教、あるいは厩舎の維持等を行い、資金が底をつけばゲームが終了するという制約の中で、どのように交配して馬を生産し、これをどのように調教するか、どのレースに馬を出走させ、どの騎手に騎乗させて騎手にどのような指示を与えるか、いつ馬を引退させあるいは売却するかといった様々な事柄について、馬の交配や血統に関する知識を利用し、あるいは馬の特性や適性を考慮しつつ決定や選択を繰り返すことによって、あたかも実際に馬の生産者、馬主又は調教師になったかのようにゲームを進め、その過程でプレーヤーが成功や挫折を経験するという、競走馬育成シュミレーションゲームである。」

結論から言いますと、ギャロップレーサー事件下級審判決とは結論は真逆になっており、ダービースタリオン事件下級審判決は、競走馬についてパブリシティ権を否定し、ゲーム会社の損害賠償責任を否定しています。

その理由について、東京高裁は、パブリシティ権というものは、「もともと人格権に根ざすものと解すべきであるから、競走馬という物について、人格権に根ざすものとしての、氏名権、肖像権ないしはパブリシティ権を認めることができないことは明らかである。」としています。

つまり、パブリシティ権というものは、人が持つ「人格権」にその根拠があるのであり、競走馬について、いかにその名称等に顧客誘引力があろうとも、「人」でなく「モノ」に過ぎない以上、馬主が競走馬の馬名、形態等についパブリシティ権を有していると認めることはできない、というわけです。

●最高裁の結論

このように、競走馬の馬主が原告、ゲーム会社が被告となって、競走馬のパブリシティ権の有無について、名古屋高裁と東京高裁の結論が分かれる結果となっていました。

そこで、この問題に決着をつけたのが、ギャロップレーサー事件上告審判決です。

またも結論から言いますと、最高裁は、次のように述べて、上記東京高裁の結論同様、物のパブリシティ権を否定し、ゲーム会社の損害賠償責任を否定しました。

「競走馬等の物の所有権は,その物の有体物としての面に対する排他的支配権能であるにとどまり,その物の名称等の無体物としての面を直接排他的に支配する権能に及ぶものではないから,第三者が,競走馬の有体物としての面に対する所有者の排他的支配権能を侵すことなく,競走馬の名称等が有する顧客吸引力などの競走馬の無体物としての面における経済的価値を利用したとしても,その利用行為は,競走馬の所有権を侵害するものではないと解すべきである」
「現行法上,物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,その使用権の付与が国民の経済活
動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。」
「上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に
関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできない

「なお,原判決が説示するような競走馬の名称等の使用料の支払を内容とする契約が締結された実例があるとしても,それらの契約締結は,紛争をあらかじめ回避して円滑に事業を遂行するためなど,様々な目的で行われることがあり得るのであり,上記のような契約締結の実例があることを理由として,競走馬の所有者が競走馬の名称等が有する経済的価値を独占的に利用することができることを承認する社会的慣習又は慣習法が存在するとまでいうことはできない」

ちなみに、最高裁は,ギャロップレーサー上告審判決と同日,ダービースタリオン事件について,馬主側の上告を棄却・不受理決定を下しています。

このように、ギャロップレーサー事件最高裁判決をもって、いわゆる「物のパブリシティ権」に関する議論には事実上決着したと言われています。

結局のところ、著名人のパブリシティ権というものすらそこまでカッチリ固まっていたわけではない平成16年時点において、特に何らかの法律によってその存在が明示されているわけでもない物のパブリシティ権というものを認めることは出来ないと考えられたものと思われます。

最後は少し難しい話になってしまいましたが、今後も、競馬に関して裁判で争われた事案を噛み砕いて説明していきたいと思います。

長々とお付き合いいただきありがとうございました。

 

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弁護士ドットコムに取材を受けた際の記事です。↓↓↓  上記の内容を簡潔にわかりやすくまとめてくださっています。

話題スイープの『ウマ娘』、名馬の擬人化は大丈夫? 過去には「ダビスタ裁判」も – 弁護士ドットコム (bengo4.com)

 

 


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齋藤真宏/滋賀の弁護士/ミカンLO@草津/アフターコロナにおける地方のマチ弁のニューノーマルを模索中|note

 

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