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2021-04-28

外れ馬券必要経費事件 競馬に関する法律の話③ 外れ馬券は必要経費?

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こんにちは。齋藤です。

サラリーマンの皆様にはピンとこないかもしれませんが、我々事業主にとって確定申告は一大イベントです。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、本年(2021年)も3月15日から4月15日に申告期限が延びたわけですが、余裕をもって準備を始めていたにもかかわらず、確定申告書等を提出できたのは4月になってからでした。

なんとか無事確定申告を済ませることができたことにちなみ、今回は、外れ馬券が必要経費になるかどうかが争われた事件を取り上げ、競馬と税金の話について考えてみたいと思います。

 

競馬法・日本中央競馬会法など、競馬サークルにまつわる法律の話はこちら↓↓↓

 

●はじめに

タイトルの「外れ馬券必要経費事件」は、競馬関連の判例で最も有名なものと言ってよいかもしれません。

同じような内容の最高裁判決が二つ出ています。

一つ目は、平成27年3月10日の最高裁第三小法廷判決、二つ目は、平成29年12月15日の最高裁第二小法廷判決です。

これらの事件では、

馬券の払戻金による所得は、「一時所得」か「雑所得」か
外れ馬券の購入費用を必要経費として控除できるか

が争われました。

そして、結論としては、①馬券の払戻金による所得は雑所得であり、②外れ馬券の購入費用を必要経費として控除できる、と判断したのです。

いろいろと興味深い裁判であり、この二つの最高裁判決について解説していくのがこのブログの本旨なのですが、事案を細かく見ていく前に、まずは基本的な用語を確認していきたいと思います。

●基本的な用語

所得税とは

まずは、「所得税」とは何ぞや、というところからです。

「所得税」とは、「個人の所得に対してかかる税金」のことを指しますが、それでは、そもそも「所得」とは何でしょうか。

この点、所得税法には、「所得」について定義規定は置かれていませんが、一般的に、「所得」=あらゆる経済的利得をいうと考えられています(包括的所得概念)。

そして、所得は、その性質によって次の10種類に区分されます。

1 利子所得
2 配当所得
3 不動産所得
4 事業所得
5 給与所得
6 退職所得
7 山林所得
8 譲渡所得
9 一時所得
10 雑所得

それぞれの所得について、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められています。

このように所得を分類する理由は、所得の性質に応じた担税力を考慮して、「~所得」ごとに計算方法を定める必要があるからです。

例えば、給与所得のような勤労性所得は、人には死亡や病気などといった不安定な要素があるため、不動産所得のような資産性所得よりも担税力は低いと考えられています。

ここで、今回の「外れ馬券必要経費事件」で争われた「一時所得」「雑所得」というワードが出てきました。

一時所得とは

(所得税法34条1項)
「一時所得」とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。

一時所得の定義は上記の通りですが、要するに、一時的・偶発的な事情で得た利得を指しています。

例えば、懸賞、クイズの賞金や商品、生命保険の満期返戻金、などがこれに当たります。

雑所得とは

(所得税法35条1項)
「雑所得」とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。

雑所得とは、雑所得以外の9つの分類に該当しない所得の全てを指します。

そのため、利得であれば、最終的には10の分類のいずれかに該当することになりますから、所得税法においては、上記の包括的所得概念が採用されていることが分かります。

それでは、なぜ「外れ馬券必要経費事件」では、「一時所得」か「雑所得」かの区別が問題になるのでしょうか。

それは、雑所得であれば、「必要経費を控除」することができる(所得税法35条2項2号)のに対し、一時所得であれば、「その収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)」しか控除できない(所得税法34条2項)とされているからです。

簡単に言いますと、雑所得では必要経費をまるまる控除できますが、一時所得では、直接要した金額しか控除できないとされており、これによって、雑所得に分類されれば、一時所得よりも経費が広く認められ、税負担が軽くなることになります。

一時所得と雑所得とで控除できる経費の範囲に差がある理由は、一時所得は、一回限りの行為から生じる所得ですから、所得から控除しうるのは、その所得と直接結びついている経費に限定される、ということです。

ここで、「必要経費」というワードが出てきましたので、条文を確認しましょう。

必要経費とは、

「所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額」(所得税法37条1項)

と定義されます。

このように、必要経費には、収入を得るために①「直接要した費用の額」と②「これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」があります。

この①②を「外れ馬券必要経費事件」に則してみてみますと、払戻金につながる当たり馬券の購入費用=直接要した金額=一時所得とされたとしても必要経費として控除できる金額、外れ馬券の購入費用=「直接要した」とは言えないため雑所得とされなければ必要経費として控除できない金額、と考えられますので、一時所得か雑所得かの区別が争われたわけです。

この点、個人がフツーに競馬を楽しむ限り、馬券の払戻金による所得は、原則として「一時所得」に当たり、外れ馬券の購入費は必要経費にはなりませんので、所得から控除できません。

フツーに競馬をやる限り、競馬の当たりはずれは偶然の出来事によって左右されるわけで、当選払戻金はそのようにたまたま得た収入ということで、一時所得の典型と言われておりますから、競馬においては、的中した馬券の購入代だけが必要経費となるのはいわば当然ということになります。

まあ、フツーに趣味として競馬をやっているサラリーマンが馬券で高額配当を得たからといって、その配当についてわざわざ確定申告するのか、また、申告しないことで摘発されるのか、と言われたらそうでもないかもしれません(これはパチンコ等のギャンブルでも同じでしょう)。というより、フツーに趣味程度の人は、課税されるほどの収入を得られないのが通常かと思われます(期待値的に競馬で儲けるのは難しいですし)。

しかし、本件では、そうしたフツーに競馬を楽しむレベルとは全く別次元の時間とお金と熱意のかけ方で馬券で多額の収入を得ていたがために問題となり、最高裁までもつれる結果となったのでした。

●事件の概要

いよいよ「外れ馬券必要経費事件」の中身についてみていきます。

上述の通り、平成27年3月10日の最高裁第三小法廷判決、平成29年12月15日の最高裁第二小法廷判決と二つの判決があります。

・平成27年3月10日の最高裁第三小法廷判決の事案

まずは、平成27年3月10日の最高裁第三小法廷判決について見ていきます。この判決で、最高裁判所は、払戻金について雑所得外れ馬券の購入代金は必要経費、との初判断を下しました。

大阪府の会社員Aは、馬券を自動的に購入できる市販のソフトを使用し、インターネットを介して、馬券を購入していました。

Aは,同ソフトを使用して馬券を購入するに際し,馬券の購入代金の合計額に対する払戻金の合計額の比率である回収率を高めるように,インターネット上の競馬情報配信サービス等から得られたデータを自らが分析した結果に基づき,同ソフトに条件を設定してこれに合致する馬券を抽出させ,自らが作成した計算式によって購入額を自動的に算出していました。

この方法により、Aは,毎週土日に開催される中央競馬の全ての競馬場のほとんどのレースについて,数年以上にわたって大量かつ網羅的に,一日当たり数百万円から数千万円,一年当たり10億円前後の馬券を購入し続けていました。

Aは,このような購入の態様をとることにより,当たり馬券の発生に関する偶発的要素を可能な限り減殺しようとするとともに,購入した個々の馬券を的中させて払戻金を得ようとするのではなく,長期的に見て,当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の合計額との差額を利益とすることを意図し,実際に平成19年から平成21年までの3年間は,平成19年に約1億円,平成20年に約2600万円,平成21年に約1300万円の利益を上げていました。

Aは、このように、馬券で多額の利益を上げていたのですが,馬券による収入について確定申告を怠っていたために国税局査察部に摘発され、所得税法違反(要するに脱税)で起訴されました。

本件では、税務署が、馬券による収入を一時所得とし、経費として算入できるのは的中した馬券の購入金額のみであることを前提に、5年間で34億円以上が課税所得であるとして、所得税額約6億5000万円、無申告加算税約1億5000万円との課税処分を行ったことについて、馬券による収入は一時所得ではなく雑所得ではないか必要経費として外れ馬券の購入費用も控除できるのではないか、が争われました。

外れ馬券を必要経費として算入してもらえないと困ることはちょっと競馬をやってみればわかります。

例えば、18頭立てフルゲートのレースで、5番を軸に馬連で総流しにしますと、17通りの馬券を購入することになります。

そうすると、それぞれ100円ずつ買ったとして、1700円かかるわけです。上記の買い方で、例えば、オッズ10倍の馬券を的中させたとして、10×100円=1000円の払戻金を得るわけですが、実際は1700円をかけていますから700円のマイナスです。

にもかかわらず、払戻金1000円から経費として的中馬券の購入費用100円を引いた900円の収入があることを前提に課税されてしまうと実質マイナスにもかかわらず、税金を支払わねばならない状況が生じうるわけです。

まして、本件の事案のように数億円の金額を費やして馬券を購入していた場合、外れ馬券を経費化できるかどうかで課税所得額にものすごい差が生じることになります。

なお、競馬ではなくて競輪についての記事ですが、申告が必要な金額等についてわかりやすい解説がされていますので貼っておきます。↓↓↓

以下は、最高裁の判決文の引用です。
正確性を期すため長々と引用していますが、太字部分だけ見て頂ければだいたいわかります。

本件払戻金の所得区分について
所得税法34条1項は,一時所得について,「一時所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。」と規定している。そして,同法35条1項は,雑所得について,「雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」と規定している。
したがって,所得税法上,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分されるところ,営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。
これに対し,検察官は,営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,所得や行為の本来の性質を本質的な考慮要素として判断すべきであり,当たり馬券の払戻金が本来は一時的,偶発的な所得であるという性質を有することや,馬券の購入行為が本来は社会通念上一定の所得をもたらすものとはいえない賭博の性質を有することからすると,購入の態様に関する事情にかかわらず,当たり馬券の払戻金は一時所得である,また,購入の態様に関する事情を考慮して判断しなければならないとすると課税事務に困難が生じる旨主張する。しかしながら,所得税法の沿革を見ても,およそ営利を目的とする継続的行為から生じた所得に関し,所得や行為の本来の性質を本質的な考慮要素として判断すべきであるという解釈がされていたとは認められない上,いずれの所得区分に該当するかを判断するに当たっては,所得の種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨,目的に照らし,所得及びそれを生じた行為の具体的な態様も考察すべきであるから,当たり馬券の払戻金の本来的な性質が一時的,偶発的な所得であるとの一事から営利を目的とする継続的行為から生じた所得には当たらないと解釈すべきではない。また,画一的な課税事務の便宜等をもって一時所得に当たるか雑所得に当たるかを決するのは相当でない。よって,検察官の主張は採用できない。
以上によれば,被告人が馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では,払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとした原判断は正当である。

本件外れ馬券の購入代金の必要経費該当性について
雑所得については,所得税法37条1項の必要経費に当たる費用は同法35条2項2号により収入金額から控除される。本件においては,外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するのであるから,当たり馬券の購入代金の費用だけでなく,外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができ,本件外れ馬券の購入代金は同法37条1項の必要経費に当たると解するのが相当である。
これに対し,検察官は,当たり馬券の払戻金に対応する費用は当たり馬券の購入代金のみであると主張するが,被告人の購入の実態は,上記のとおりの大量的かつ網羅的な購入であって個々の馬券の購入に分解して観察するのは相当でない。また,検察官は,外れ馬券の購入代金は,同法45条1項1号により必要経費に算入されない家事費又は家事関連費に当たると主張するが,本件の購入態様からすれば,当たり馬券の払戻金とは関係のない娯楽費等の消費生活上の費用であるとはいえないから,家事費等には当たらない
以上によれば,外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金という費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するなどの本件事実関係の下では,外れ馬券の購入代金について当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとした原判断は正当である。

結論としては、継続して大量に馬券を買いまくっている本件においては、払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に当たるまた、
本件においては,外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するのであるから,当たり馬券の購入代金の費用だけでなく,外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができ,本件外れ馬券の購入代金は必要経費に当たる
というわけです。

・平成29年12月15日の最高裁第二小法廷判決の事案

平成27年3月10日の最高裁判決で払戻金について雑所得外れ馬券の購入代金は必要経費、との初判断が下されましたが、それから3年も経たない間にまたもや似たような話が最高裁で争われることになります。

報道によりますと、本件で、北海道の男性Bは、平成22年までの6年間に、インターネットで約72億7千万円分の馬券を購入し、計約5億7千万円の利益を得ていたようです。

Bは、平成17年分から同22年分までの所得税の確定申告をし,その際,当たり馬券の払戻金に係る所得は雑所得に該当し,外れ馬券の購入代金が必要経費に当たるとして,総所得金額及び納付すべき税額を計算して申告しました。

ところが、札幌国税局は払戻金を一時所得とし、外れ馬券分を経費と認めなかったため、Bが課税処分の取り消しを求めて行政訴訟を提起した、という事案です。

上記平成27年3月10日の最高裁判決が既に出ていたにもかかわらず、なぜ国税局は払戻金を一時所得、外れ馬券分を経費として控除できない、と考えたのでしょう。

この二つの事案において、平成27年3月10日の最高裁判決において、Aは、独自の条件設定と計算式に基づいて馬券を自動的に購入するソフトを使用してインターネットで長期間・多数回かつ頻繁に網羅的に購入していたのに対し、

平成29年12月15日の最高裁判決の事案では、Bは、個々のレースについて,競走馬の着順を予想し,自ら定めた数種類の購入パターンに従って,当該レースにおいて購入する馬券を逐一自ら決定したうえで,購入していた、という点において異なっていました。

後者では、ソフトを使わず、レースごとにしっかりと結果を予想して馬券を購入していた点をもって、雑所得とされるための前提となる営利目的での経済的活動の実態がないと解釈されたのです。

判決文によりますと、

Bは,自宅のパソコン等を用いてインターネットを介して馬券を購入することができるサービスを利用し,平成17年から同22年までの6年間にわたり,中央競馬のレースで,1節(競馬開催日又はこれが連続する場合における当該連続する競馬開催日を併せたもの等をいう。)当たり数百万円から数千万円,1年当たり合計3億円から21億円程度となる多数の馬券を購入し続けました。

Bは,日本中央競馬会に記録が残る平成21年の1年間においては,中央競馬の全レース3453レースのうち2445レース(全レースの約70.8%)で馬券を購入しました。

Bの馬券の購入方法は以下のようなものでした。

まず,日本中央競馬会に登録された全ての競走馬や騎手の特徴,競馬場のコースごとのレース傾向等に関する情報を継続的に収集し,蓄積する。
そして,その情報を自ら分析して評価し,レースごとに,競争馬の能力,騎手(技術),コース適性,枠順(ゲート番号),馬場状態への適性,レース展開,競争馬のコンディション等の考慮要素を評価,比較することにより着順を予想する。
その上で,予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小との組合せにより,購入する馬券の金額,種類及び種類ごとの購入割合等を異にする複数の購入パターンを定め,これに従い,当該レースにおいて購入する馬券を決定する。
馬券購入の回数及び頻度については,偶然性の影響を減殺するために,年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標とし,上記の購入パターンを適宜併用することで,年間を通じての収支(当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含む全ての有効馬券の購入代金との差額)で利益が得られるように工夫する。

このような方法で、Bは、

馬券の購入により,平成17年から同22年までの各年において,全ての有効馬券の購入代金の合計額に対する当たり馬券の払戻金の合計額の比率である回収率がいずれも100%を超えており,その収支上,同17年に約1800万円,同18年に約5800万円,同19年に約1億2000万円,同20年に約1億円,同21年に約2億円,同22年に約5500万円の利益を得ていた。

ものすごい腕前というほかありません。

判決文を読む限り、要するにフツーに予想していたということのようです。

熱意やテクニック、自分の予想を信じて大金を投じる肝っ玉にはほとほと頭が下がります。

他方で、そのように、フツーに予想していたからこそ、平成27年最高裁判決の事案とは異なると評価されたわけです。

第一審の東京地裁は、

そうすると,本件競馬所得は,結局のところ,個別の馬券が的中したことによる偶発的な利益が集積したにすぎないものであって,営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当するということはできない。

とブッた切っていました。

他方で、最高裁の判断は、第一審の東京地裁とは正反対になりました。

最高裁は、一時所得か雑所得かについて、

馬券購入の期間,回数,頻度その他の態様に照らせば,被上告人の上記の一連の行為は,継続的行為といえるものである。

と述べ、

上記6年間のいずれの年についても年間を通じての収支で利益を得ていた上,その金額も,少ない年で約1800万円,多い年では約2億円に及んでいたというのであるから,上記のような馬券購入の態様に加え,このような利益発生の規模,期間その他の状況等に鑑みると,被上告人は回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたといえるのであって,そのような被上告人の上記の一連の行為は,客観的にみて営利を目的とするものであったということができる。

とし、

 以上によれば,本件所得は,営利を目的とする継続的行為から生じた所得として,所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当である。

と結論付けました。

また、外れ馬券の必要経費性については、本件では、

偶然性の影響を減殺するために長期間にわたって多数の馬券を頻繁に購入することにより,年間を通じての収支で利益が得られるように継続的に馬券を購入しており,そのような一連の馬券の購入により利益を得るためには,外れ馬券の購入は不可避であったといわざるを得ない。
したがって,本件における外れ馬券の購入代金は,雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として,同法37条1項にいう必要経費に当たると解するのが相当である。

として必要経費性を肯定しました。

結局のところ、上記二つの事件のように、収支をプラスにすることを目的として極めて大量の馬券を購入して収入を得ていた場合、自動購入のためのソフトを用いていようが、いちいちしっかり予想して馬券を買っていようが、馬券の払戻金による所得は「雑所得にあたり、外れ馬券の購入費用は必要経費として控除できる、と判断されたわけです。

●まとめ

従来、競馬をはじめとする公営ギャンブルによる所得は、一時所得の典型であるとされていました。

一時所得は、一回限りの行為から生じる所得ですから、所得から控除しうるのは、その所得と直接結びついている経費に本来は限定されるわけです。

従って、競馬においては、的中した馬券の購入代だけが必要経費となるのはいわば当然のはずです。

しかし、本件のように回収率に着目したうえで、網を大きく広げて馬券を購入してトータルをプラスにすることを目的とする場合、大量に購入した外れ馬券を必要経費として控除できなければ、収入に比して税額が過大になりすぎます。

税務署としては、本件の二つの事案において、そもそもギャンブルで得た収入なんだから、そこからガッツリ税金をとってもいいじゃないか、という発想で通達通りの運用を徹底したのかもしれませんが、そうした杓子定規の運用で果たしてよいのか、という一石が投じられたのが本件の最高裁判決でした。

ただ、本件の二つの事案は、あくまで超例外的な場合であり、基本的には競馬の配当は一時所得で、当たり馬券の購入金額しか経費として控除できない、ということはしっかり押さえておかなければなりません。

●参考書籍

このブログの記事を書くにあたって、以下の書籍を大いに参考にさせて頂いております。

本書の編著者の中村和洋弁護士は、上記平成27年最高裁判決の事件を担当した弁護士とのことで、本書の平成27年最高裁判決についての記載はとても読み応えがあります。

「プロフェッショナルを目指す人」とは書かれていますが、内容はかなり基本的でわかり易いことに厳選されており、また、取り上げられている判例もキャッチ―なものが多いので、私のような税務のシロウトでも興味深く読み進めることができます。

定価2700円なのですが、アマゾンでは希少になっているようで、定価より遥かに高額な値がついてしまっておりますので、アマゾンで購入してしまう前に、まずは他サイトでご確認頂ければと存じます(見栄えのためにアマゾンのアフィリを貼ってはおりますが)。

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●横目調査の問題

平成29年最高裁判決の事案の北海道の男性は、自ら確定申告をしていました。他方で、平成27年最高裁判決の事案の某市職員の男性の場合、確定申告をしていなかったわけですが、税務署はなぜ、同男性の無申告の収入に気付くことができたのでしょう。

判決文を見る限り、平成27年最高裁判決の事案で直接問題となってはおりませんが、「横目調査」という問題があります。

上記の中村和洋弁護士のブログ↓↓↓では、「横目調査とは,別件の税務調査に名を借りて,それとは無関係の第三者の口座を調査すること」と定義されています。

横目調査について | 中村和洋法律事務所Blog 中村和洋法律事務所 NAKAMURA KAZUHIRO LAW OFFICE 大阪市北区西天満 (k-nakamura-law.jp)

 

国税局は、たとえばCさんの銀行口座の調査と称して銀行に調査に入り、そのとき金融機関から開示された口座のデータから、Cさんとは無関係だが重要そうな部分を「横目」で見てメモし、そのメモを端緒としてたとえばDさんの所得隠しを疑う、というようなことが行われているようです。

こうした横目調査が合法か否かは問題となりうるところであり、現に税務調査が違法とされた事案もあります。

この「横目調査」については、以下の書籍が参考になります。

172頁以下、横目調査についてしっかりと記述されています。

小難しい話はあまりなく、単純な読み物として楽しく読めます。

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長々とお読み頂き、ありがとうございました。

 

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