コロナ下の革靴探訪 至高のローファーを求めて
こんにちは。齋藤です。
新型コロナウイルスの影響で人と会う機会が減り、ビジネスでも服装のカジュアル化が進み、スーツとスニーカーの合わせも以前ほどの違和感はなくなってきています。
しかし、靴に最もよい素材は、機能性とエレガンスとを兼ね備えた、「革」をおいて他にない、というラズロ・ヴァーシュ氏の言葉は至言であり、サステナビリティがどうだなどと言われようが、革靴を履き続けることをここに表明したいと思います笑
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全ての革靴好きが読むべき名著だと思っております。
とはいえ、やはり世の流れにも抗いがたいもの。
そこで、ちょっとくだけてローファーはどうか、と考えました。
というわけで、ついに買ってしまいました。オールデンのペニーローファー。
正規の価格だと結構しますのでメルカリで購入笑
靴をメルカリで買うのも勇気がいりましたが、結果、全く不満はありません。新品未使用品との触れ込みでしたが、その通り、どう見ても新品の状態でした。
これまでスエード靴を持っていなかったので茶スエードにしました。
型番は99169です。99○○○ということは日本仕様です(日本人の足に合わせて、本国仕様に比べ、少し甲を長めにとっている)。
さて、肝心の履き心地ですが・・・スニーカーレベルの柔らかな足当たり。
スエードということもあるのかもしれませんが、他のグッドイヤーウェルト製法の靴の履き心地とは一線を画します。
実は私はかなりの偏平足でして、革靴選びにはいつも難儀しており、それゆえオーダーなどにもかなり興味を持っております(靴に10万円以上かけるというのも・・・という金銭感覚から踏ん切りがつかずにいますが)。
横幅が広いわりに甲はそれほど高くない、という感じでなかなかピッタリくる革靴が見つかりません。
そんななかで、抜群の履き心地と名高いオールデンを一度は味わってみたいと常々思っておりました。
購入の経緯
上記の通り、昨今のスーツスタイルの簡略化の流れから、ジャケパンの際にローファーを履こうと考え、JMウエストン、オールデン、ロイドフットウェアに狙いを絞り、心斎橋へ。
まずは、心斎橋のラコタハウスに足を運び、オールデンを試着したのですが、、、
サイズが無い・・・涙
ラコタハウスではオールデンを持ってない、と言うと計測器で足のサイズを計測してくれます。そこで店員さんが導き出したのがサイズ8。
US8と聞いてデカくない?と思いましたが、とりあえず履いてみることに。
実は以前にもオールデンのVチップ・モディファイドラストを試着したことがあり、その際は7.5でもデカく感じました。
案の定、8はかなりガバガバという感覚。
基本的に普段イギリス靴をタイトめに履いていることもあり、いっそうデカい、と感じたのかもしれません。
何よりかかとがユルい。
店員さんに聞くと、オールデンのフィッティングというのはこういうイメージで、また、ローファーのかかとはある程度ユルいもんだとのこと。ソールがしっかり返るようになればかかとはもう少しついてくるようになるはずとのこと。
7.5を履いてみたい、と言ったところ、ストックが無いとの答え。7.5にしたところでそれほどかかとの食いつきは変わらないと思う、とのことでした。
履いてみた際のまるでスニーカーのような履き心地にこれは!!!と思ったものの、さすがに他のサイズを試着することなく10万円以上の靴は買えない、と思い、やむなくラコタより撤退。
正直、偏平足の私には、土踏まずがかなりあるモディファイドラストはピンとこなかったのですが、ローファーのVANラストはかなりの好感度。
続いてマスターロイドのローファーを狙ってロイドフットウェアへ。
ここでもサイズが無い・・・しかも、マスターロイドのローファーでマイサイズに近いサイズは一足もストックが無いとのこと。
12月まで納品が無いと言われ、やはり泣く泣く撤退。
最期の望みをかけ、#180 シグニチャーローファーを狙ってJMウエストンへ。
複数のサイズを試着させてもらいましたが、やはり偏平足の私にはシュッとしたフランス靴であるウエストンは合わないとの結論に。
かなりタイトフィッティングのはずなのにかかとは結構ユルい。
甲の締め付け具合は耐えられそうだが、長く歩くと小指が痛くなりそうな予感。
ウエストンはウィズがA~Fまで揃っているのがウリと聞いているものの、Fはあまり売れないのか取り寄せになるそうで、店頭には在庫が無いとのこと。
個人的には、JMウエストンが数あるローファーのデザインの中でいちばん洒落ていると思っているのですが、12万円以上もする小指が痛い靴を買うわけにもいきませんのでやはりやむなく撤退。
はて、どうしたものか、と途方に暮れていたところ、メルカリで今回購入した一足が目に飛び込んできた、というわけです。
サイズ感・フィット感
ここで、皆様のサイズ選びの参考までに、私の購入サイズについて記載しておきます。
チャーチ、チーニーのようなイギリス靴は、UK6.5を履きます。
ビルケンシュトック、トリッペンのようなドイツ靴は40か41です。
そんな私が今回購入したオールデンは、上記の#99169のサイズ7、Dウィズです。
試着してもいないサイズを買う、というのはとても勇気が入りますが、だからこそのメルカリのディスカウント率なわけです。
上述した通り、8はガバガバ、7.5(モディファイドラスト)もまだユルい、7(モディファイドラスト)は店員さんによるとこれはナシ、ということを踏まえ、ローファーなのでモディファイドラストよりもタイトにすべく7.5あるいは7かと。
そして、ウエストンではスエードの場合スムースレザーよりも革が伸びやすいのでハーフサイズ下げを推奨されたこと、夏場はカバーソックスみたいな薄手の靴下で履くことになること、を考慮しサイズ7を選択しました。ラコタハウス推奨のサイズ感ではないのでしょうが。
気になる着用感ですが・・・甲は低め、幅は広めに感じます。
甲には締め付け感を感じます(痛くはない程度)。私の足にはちょっと小さすぎたのかもしません。捨て寸もあまりない。
ウエストンならジャストサイズと言われれるのでしょうが、やはりオールデンのサイズ感ではないのだろうと思います。
ただ、スエードであることもあって、タイト過ぎて痛みが出る、というわけではなく、これはこれであり、というフィット感かと。
↑↑↑こんな感じでわかりにくいですが結構ピタピタです。
普通の人より甲が低い(たいていの靴で羽が閉じがち)な私にも、甲の低さを感じますので、甲が高めの人は甲に痛みを感じてしまうかもしれません。スエードですらそうなので、カーフ、ましてやコードバンであればより伸びにくいものと考えられますのでサイズを上げて履くしかないのでしょう。
そして、やはりかかとはユルい・・・ 8だろうが7だろうがユルい・・・
日本には出回りにくいウィズEを探したい、とも考えていましたが、ウィズEとなれば、かかとも大きくなる(ウィズD→かかとB ウィズE→かかとC 靴の内側に表記されている)ので、私はウィズDで正解でした。
どっちみちかかとがユルいのであればこれほどピッタリサイズにはせず、よりオールデン的なサイズ感を求めて7.5くらいがちょうどよかったのかと思っております。
靴下を履くのでかかとはついてはくるのですが、しっかりついてきている感覚とは程遠い。
それもそのはず、所有する他の革靴に比べ、かかとの作りが圧倒的に大きい。
さっそくロチェスター製のオールデン純正シューツリーを購入しましたが、やはりかかとは大きい。
ブリティッシュメイド謹製のシューツリーと比較しますとかかとの大きさが分かります。
ちなみに、このオールデン純正シューツリー、オールデンには数々ラストがあり、幅の広さや甲の高さがラストによって結構違うにもかかわらず、どのラストにも同じシューツリーで対応するとのこと。
この大雑把さ・・・アメリカンです・・・
↑↑↑純正シューツリーの外箱です。レッドシダーの樹液で箱にシミができています。包みを開けるだけで杉のいい香りがします。
↑↑↑純正シューツリー:税込8160円
↓↓↓ロチェスターのシューツリー:税込5940円
www.amazon.co.jpAmazon.co.jphttps://www.amazon.co.jp/ロチェスター-ロチェスター・6011シューツリー-6011S-メンズ-ブラウン/dp/B000CC9ERQ/ref=sr_1_1?adgrpid=114496984703&hvadid=547906528281&hvdev=c&hvqmt=e&hvtargid=kwd-435030271851&hydadcr=14090_13341280&jp-ad-ap=0&keywords=ロチェスター+シューツリー&qid=1639629690&sr=8-1
ロチェスターのシューツリーの品番が6011で、オールデン純正シューツリーの品番がAL6011であることからすると(ALはAldenの意と思われます。)、全く同じ品と考えられ、違いは金色のAldenプレートのみ。ここに2220円を投下するかどうかは各人の価値観によるところかと・・・
サイズ感・フィット感につきましては、結局のところ、少なくともヴァンラストはかかとが小さい日本人にはどうにも合いにくいのかなとも思いました。少なくとも、かかとがピッタリついてくるローファーを求めている方にはマッチしないというほかないものと思われます。
購入してから約3週間ほど、たびたび履いて外出していますが、かかとのこのユルさが劇的に改善されるとは考えにくい状況です(そもそも、オールデンはソールの革が柔らかいのか最初から返りがめちゃくちゃいいので、ソールが返るようになればかかとがついてくるということも考えにくそう)。
作りについて
よく言われているように、作りには「粗さ」を感じます。
↑↑↑たとえば、ソールのチャネル(溝)ですが、写真ではわかりにくいかもしれませんが、ガタガタです。日本製とでは比べものにならず、チャーチやチーニーよりももっと雑です。
↑↑↑他方で、スキンステッチはなるほどキレイです。
↓↓↓オールアラウンドステッチも独特の雰囲気が出ます。
山陽山長の細部までキッチリ作り込まれた靴が7万円台で購入できることからすると、国内正規品で税込み10万5600円のオールデンのローファーは、作りという点では割高というほかないでしょう。
他方で、オールデンならではの柔らかな履き心地、デザイン、オールデンというブランドにお金を払うつもりなのであれば、割高もクソも、買うしかありません。
まとめ
結論としては、オールデンのローファー・ヴァンラスト・US7・Dウィズは、私にとってかなり満足のいく買い物ではあったものの、私にとって至高のローファーだと確信するには至りませんでした。
同じもののUS7.5も購入して履きこんでみたいとの思いは消えませんし、また、そもそも、もう少しかかとがフィットするラストでなければ、私にとっての「至高」のローファー認定はできません。
他方で、今回ローファーを購入してみて思いましたが、さまざまな外出先で靴を脱ぐことを求められる日本において、ローファーは非常にラクです。
これまで、「ビジネスには紐靴」と考えてローファーを全く検討に入れてこなかったのですが、このコロナ禍で、ビジネスにローファーもアリ、という空気になってきたのではないかと感じております。
この空気が続く限り、最高のローファーを求める旅を続けていこうと思っております。
痛くない革靴の探求
最後に、私が靴にこだわる理由にちょっと触れたいと思います。
高校生の頃、学校に制靴(せいか)というものがあり、購買部で購入した黒のストレートチップの着用が義務付けられておりました。
おまけに、学生に履かせるために7000円と安価に設定されており、とにかく革が固く、履きおろしの際は足の甲や指の上部を革に噛まれて出血する、というようなシロモノでした。
足に合うも合わないもなく生徒全員がそれを履かなくてはならず、足幅が広い私には苦痛でしょうがありませんでした。結局、両方の小指の爪は変形し、現在でもヘンなふうにしか生えてきません。
こうした経験から、私は「足に合った靴を履く」ことは非常に大切なことだと考えております。
この点、たとえば、「通」の方々は、JMウエストンの「シグニチャーローファー」や「ゴルフ」には、最初の数年間「修行」期間があるなどと言い、なかには靴が足に馴染むまで、出血しながら履く猛者もいると聞きます。
レビュー記事などを見ていると、〇年間は歩くたびに苦痛でしたが、今では快適です、やはりどこどこの靴は修行期間を経れば最高の相棒になります、というような話をよく見かけます。
しかし、上記のような経験から、「痛い靴を無理して履く」という行為は本当にやめておいた方がいいと考えています(中・高と都合6年上記のストチを履き続けた結果、小指の爪の変形は治療不可能なものとなってしまいました)。
考えてみますと、もともとめちゃくちゃ痛かった靴が数年を経て痛くなくなるのだとすると、その間に靴の革は足に合わせてかなり伸びているわけです。
とすると、もともとの原型からは形状はかなり変化しているはず。要は形が崩れてしまっているわけです。
上記のような話を読むたびに、それって足に合っていないのでは?と思わざるを得ません。
そして、痛い靴を無理に履こうとすることにはブランド至上主義が隠れているのではないかと思うのです。
結局、あるブランドを所有していることの優越感的なものに価値を見出しているに過ぎず、それがハイブランドか、もう少しマイナーな高級紳士靴ブランドか、という違いにすぎないのではないかと。
ある程度可塑性のある革という素材を使っている以上、さすがに数年間を経れば痛みが軽減されるのはある意味当然で、それはそのブランドの靴が良いものであることの証明にはならないはず。
もちろん、たとえばジョンロブならジョンロブのブランドが好きだから痛かろうが足に合ってなかろうが履くのだ、という御仁はブランドに価値をおいているのだから何もいうことはない。
しかし、ブランド価値などではなく、いい靴だから履くのだ、と主張つつ、出血しながら履いているというのは、その裏に無批判なブランド至上主義が隠されているはずなのに、当人がそれを認識していないというのはあまりにおそまつですし、認識していてそれを隠しているのであれば欺瞞もいいところかと。
↑↑↑グルメ評論家のブランド信仰を喝破する山岡さんです(第2話「味で勝負!!」より)。名セリフ「フォワ・グラよりうまい鮟鱇の肝だッ。」が飛び出します。
この名セリフを革靴業界風に言い換えると、「ジョンロブより日本人の足に合うリーガルの靴だッ。」でしょうか。
かくいう私も憧れのオールデンを買い、さらには2220円増しでオールデンの金色プレート付純正シューツリーを購入しているのですから、ブランド至上主義の権化との誹りを免れません。
長くなってきましたのでまとめますと、言いたいのは、痛い靴を無理して履くのは絶対にやめた方がよい、ということと、最初はかなり痛いけど、我慢していたらマシになるから大丈夫、というレビュー記事には気を付けろ、ということです。
足に合った靴を履く、という基本中の基本を正しく発信しなければ、革靴=痛いというイメージがさらに氾濫し、やがてすべての紳士靴が人工皮革+化学繊維のスニーカーに取って代わられてしまうのではないかと懸念してやみません。
これが杞憂であればよいのですが・・・
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